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アォオーン?!

 食うつもりでいたのに、どうしてこんなことになってしまったのかと、犬養は快楽に思考をチカチカさせながら考える。 「う、はぁ……あ、んっ、ううっ」 「ほら、ほら、どうしたんですか? 犬養さん。欲求不満だったんでしょう。もっともっと楽しみましょうよ」  クスクスと軽やかな声で笑われて、体中の毛が怒りとも屈辱とも快感ともつかない感情で逆立った。 「ふふ。知っていたんですよ、僕は。犬養さん、ずっと僕を狙っていましたよね。物欲しそうな視線に、いつもゾクゾクしていました」  そう言って犬養洋一にのしかかっているのは、宇佐美勝昭。宇佐美が体を揺らすごとに、長いタレ耳が犬養の顔に当たった。いっそ噛み千切ってやろうかと犬養は牙を剥いたが、体内を穿つ快感に邪魔をされて、口を閉じることができなかった。 「んぁっ、あ、あああ……は、あぅう」 「可愛い声で啼きますねぇ、犬養さん。やっぱり、名前の通り、あなたは狼ではなく犬なんじゃないんですか?」  そう言って、宇佐美は犬養の尖った三角の耳に噛みついた。 「んぅっ」  犬養の背がしなり、宇佐美の陰茎を包んでいる肉筒がキュウンと締まる。 「うっ、ぁ……すごい……いい絞めつけです。耳、感じるんですね」 「ぁ、違っ……くぅうんっ」  耳を甘噛みされて、犬養は鼻を鳴らした。親を求める子犬のような啼き声に、宇佐美はクックッと喉を鳴らす。 「ウサギが常に、捕食される側だと思い込んでいたのが間違いなんですよ」  そうかもしれないと、犬養は快楽に鈍りつつある思考をめぐらせ、こうなった経緯を思い起こした。  ことの起こりは、株式会社ルマニアに引き抜きで宇佐美が入って来たことにあった。  株式会社ルマニアは、肉食系の獣人ばかりが働く企業だったが、社長であるライオンの獣人、獅子堂惇太がサイの獣人、犀川武明の経営する株式会社ミワギと提携すると決め、これからは肉食系、草食系に関わらず、優秀な人材を登用すると方針を変更した。  そこで、ひとり目の草食系獣人社員として、株式会社ハクラサから黒豹の獣人である兵藤幹彦にヘッドハンティングされてきたのが、ウサギの獣人、宇佐美勝昭だった。  ふっくらとした頬とやわらかな毛並み。垂れた耳とクリクリした瞳に、全員が目を奪われた。むろん、狼の獣人である犬養も例外ではなかった。おいしそうな香りをふりまきながら、柔和にほほえんだ宇佐美は、ひかえめな声で「よろしくお願いします」と言った。  誰もが、涎を垂らしそうな目で宇佐美を見ていた――と、犬養は思っていた。  だから、肉食系獣人ばかりのルマニアに、すんなりと馴染んで仕事をこなす宇佐美が、実は兵藤の愛人だとか、社長と関係を持っているとか、仕事を教わるという名目で、熊の獣人、熊川琢磨と情熱的な残業をおこなっていたとかいうウワサを真に受けた。  真実は、誰も知らない。あくまでもウワサでしかなかったが、火のない所に煙は立たない。誰もがこっそりと宇佐美を味わっているのだと、犬養は信じ込んだ。  そんなある日、書類の束を持っていた宇佐美に上目遣いで、仕事の手伝いを申し込まれた。  これはチャンスだと、犬養は快く承諾した。しかし残業にならなければ、コトには及べない。どうやって全員が終業するまで引き延ばそうかと考えていると、資料室で過去のデータについて色々と教えてほしいと申し込まれた。 「資料室? まあ、いいが。それなら社長に許可を」 「許可なら、もういただいています。過去のデータを確認したいと申し出ましたら、犬養さんは資料を探すのが得意とうかがいまして。今日は、ここの業務をより深く知るために、就業までずっと資料室にこもってもいいと言われたんです」  これは好機と、犬養の心は弾んだ。うっかり牙を剥いてしまわないよう、激しくなった鼓動を抑える。まだ、獲物に飛び掛かる時ではない。しかるべき時に、しかるべき俊敏さで仕留めなければ。  いくら淫らな噂が多数の宇佐美とはいえ、そうあっさりと体を許すはずがない。これを誘いと捕らえるのは危険だと、彼が入社してからずっと育んできた飢えをなだめた。 「犬養さんの業務を邪魔してしまうことになりますが、よろしいですか?」 「すこしでも早く、一人前になってもらわないとならないからな。多少、業務が遅れたって、あんたが会社のことを理解するほうが、後々のことを考えたら有益だろう?」 「ああ、ありがとうございます」  愛らしい目をキラキラさせて、宇佐美がほほえむ。これから食われることになるのにと、犬養は内心でほくそ笑んだ。  資料室は会社の地下にあり、資料室といっても、いまはほとんどがデータベース化されているから、ほぼ誰も立ち寄らない上に、音がほとんど外に漏れない構造になっている。  そんな場所にわざわざ出向いて、資料を確認したいと言った宇佐美の狙いに、犬養はここで気が付くべきだったのだ。  だが、欲に目がくらんだ犬養は、わずかな疑念すらも浮かべることなく宇佐美を連れて、地価の資料室へと入っていった。 「さて。まずは、どんな資料が欲しいんだ」  資料室は埃っぽく、古い紙の匂いが充満していた。換気扇は古く、少し声を張り上げないと会話ができない。だから犬養は、宇佐美がこっそり扉の鍵を閉めた音を聞き逃した。 「そうですね。僕が欲しい資料は」  宇佐美は持ち前の跳躍力を活かして、犬養の背中に飛び掛かった。気配を察して振り向いたが、わずかに遅い。全身で体当たりをされた犬養は倒れ込み、書棚でしこたま頭を打った。 「うっ……い、つつ」  強い衝撃にめまいを覚え、頭を押さえる犬養のネクタイが外される。やはり宇佐美はスキモノだったかと、犬養はニンマリした。 「なんだ、ウワサ通りだったのか?」 「ウワサ、ですか。いったい、どんなウワサを聞いていたのですか」 「おまえが、相当なスキモノだってことだよ」 「そうですね。僕は、かなりのスキモノかもしれません。だって、いつも犬養さんを見て、ムラムラしていたんですから」  そういうことなら遠慮はいらないと、宇佐美に伸ばした犬養の手首にネクタイがかけられた。えっと思う間もなく、器用にクルクルと両手首を縛られて、どこにそんな力がと思うほど強く引かれて扉の取っ手にくくられる。 「なにをしようってんだ」 「犬養さんが、僕にしたいと思っていたことですよ」 「それが、どうして縛ることになるんだ」  ネクタイを外そうとしても、扉がゴトゴトと音を立てるだけで、外れそうにない。宇佐美はゆったりと自分のネクタイを外して、念のためですと言いながら、犬養の手首と扉の取っ手をしっかりと結びつけた。 「お互いの望みが一致してんのなら、縛る必要なんかないだろう。それとも、アレか。そういう趣向か」 「ええ。そういう趣向ですよ、犬養さん。僕はか弱いウサギですからね。狼の牙にかかったら、ひとたまりもありません。ですから、怖いので縛られていてください」  おだやかな声音で鼓膜を撫でられ、犬養はゾクゾクした。宇佐美の目が艶やかに濡れている。ゴクリと喉を鳴らした犬養の頬に口を押し当てて、宇佐美はシャツのボタンに手をかけた。  ゆっくりと、焦らすようにひとつずつボタンを外される犬養は、興奮に股間を熱くした。ジャケットごとシャツを広げられ、しなやかな筋肉に包まれた胸板を撫でられる。 「ああ、やはり肉食獣ですね。すごく、たくましい……ですが、とても引き締まっていてしなやかです」  うっとりとつぶやかれ、犬養は痛いほどに心臓と鼓動をたぎらせた。妖艶に微笑んだ宇佐美の手が、犬養のベルトにかかる。期待に尻を動かす犬養の思惑をかわして、宇佐美はズボンの上から股間を擦った。 「んっ、おい」 「こんなに硬く、大きくして……そんなに僕が欲しいんですか? 犬養さん」 「は、ぁ……おまえもそうなんだろう? だったら、焦らさずにとっととしようぜ」  ニヤリとした犬養の興奮に上ずった表情に、宇佐美は優雅にほほえんで鼻先にキスをした。 「そう、焦らないでくださいよ。もっと、じっくり楽しみましょう? 終業まで、あと三時間もあるんですから。ああ、もしかして、漏らしてしまいそうなんですか?」  そっと股間をなぞられて、犬養は快感にうめきながら腰を浮かせた。 「うっ、はぁ……宇佐美」 「可愛いですね、犬養さん。ほんとうに、愛らしい……漏らしてしまって、シミを作ってしまったら困りますしね。もっと焦らして、体中が性感帯になるくらい、性欲まみれにしたかったのですが、しかたありません」 「んっ、宇佐美、おまえ、なに言ってんだ」  なにかがおかしいと、犬養は気づきはじめた。犬養の目に戸惑いを見つけた宇佐美は、手早くベルトを外してズボンを下ろし、犬養の陰茎をむき出しにして手のひらに包んだ。 「立派ですね、犬養さん。先っぽ、すこし塗れていますよ? 愛撫らしい愛撫もしていないのに、もうこんなにしているなんて淫乱ですね」 「淫乱は、そっちだろう?」  息をわずかに乱した犬養が、獰猛な笑みをひらめかせる。さきほどの疑念は気のせいだったかと、淫猥でありながら楚々とした笑みを浮かべる宇佐美を見る目は、獣欲にぎらついていた。 「そうですね。僕は、とても淫乱ですよ。だから、覚悟をしてくださいね」  ニッコリとした宇佐美は、犬養の亀頭と手のひらで包むと、くすぐるように捏ねはじめた。尿道を貫く快感にうめく犬養の腰が揺れて、陰嚢が揺れる。開いている手でそれを掴んだ宇佐美は、楽しそうにやわやわと揉みしだいた。 「犬養さんの陰嚢、プルプルしていて、いい手触りですね。パンパンに膨らんで……ふふ。かなり貯まっているんですか? それとも、僕とシたくてたまらなかったのでしょうか」 「ふっ、はぁ……宇佐美ぃ、おまえ、手慣れてんなぁ」  じわじわとなぶるような快感を味わいながら、犬養は余裕ぶった。本当なら、もっと激しく幹を擦って射精をしたいところだが、これから食う相手に情けない姿は見せたくない。そんな犬養の心情を知ってか知らずか、文字通り彼の急所を手玉に取りつつ宇佐美は熱っぽい息を吐く。 「だって、僕はウサギですよ? 犬養さん。ウサギの性欲はすごいって、聞いたことありませんか」 「ああ、たしか、年中発情しているんだったか」 「そう……発情期というものを持たないんですよ、ウサギは。ですから、物欲しそうな犬養さんの視線は、たまらなく刺激的でした」 「あん?」 「気づいていなかったんですか? よく僕を、舌なめずりするような目で見ていたじゃないですか。その度に、僕はどれほど興奮したか」  悩ましい息を吐いて、宇佐美は犬養の亀頭と陰嚢を揉み続ける。亀頭からはトロトロと先走りがあふれて流れ、クチュクチュと淫猥な音を立てた。 「は、ぁ……そりゃあ、悪かったなぁ……だが、おまえが、うまそうな匂いをさせているのが悪いんだろう? 長い耳をゆらゆらさせてよぉ」  快感のせいで切れ切れになりつつも、凄んでみせた犬養の陰茎は爆発寸前になっていた。それなのに決定打となる刺激は来ない。射精のための準備液が、とめどなくあふれるばかりで、陰嚢には欲望が貯まるばかりだ。 「僕の耳が、お好みですか?」 「おまえの耳が揺れるたびに、甘ったるい匂いがするんだよ」 「あなたを誘う匂いですよ、犬養さん」  キュッと亀頭を握られて、犬養は短くうめいた。そのままグチュグチュと亀頭をこねくり回される。欠陥が浮き出るほどに怒張した幹を先走りが伝い落ち、体毛を濡らした。濡れた体毛が蛍光灯の明かりを受けて、テラテラと光っている。 「おいしそうですね、犬養さんの」 「ああ? そう思うんなら、さっさと食えよ。よくしてやるぜ」  膝を折って脚を広げた犬養は、腰を上下に振って誘った。宇佐美の手が滑って、幹が擦られる。脳天まで突き抜ける快楽に喉をそらして、犬養は絶頂を期待したが宇佐美の手はすぐに外れた。 「んっ、ぁ……なんだよ、そのまま扱けばいいだろう」 「そんなことをしたら、犬養さんはイッてしまうじゃないですか」 「あ? おまえの中に入ってからイケッてんなら、とっとと乗ってくれよ」 「違いますよ、犬養さん」  語尾に音符が見えるような口調の宇佐美に、犬養は首をかしげた。 「は?」 「乗るには乗りますけど、犬養さんが僕の中に入るのではなく、僕が犬養さんに入るんです」 「え……なん、え?」  困惑する犬養にキレイな笑顔を見せた宇佐美は、犬養の先走りでたっぷり濡れた指を、彼の尻にあてがった。 「ヒッ……う、宇佐美?」  口の端を引きつらせる犬養に、宇佐美は最高にやさしくて残酷な視線を向ける。 「やさしくしますから、大丈夫ですよ」 「いや、待て待て待て待て待……ぅうっ」  秘孔に指を突っ込まれ、犬養はうめいた。自分の先走りで濡れた指で内壁をさぐられて、吐き気をおもよおす。 「ぐ、ぅう……やめ、吐きそう」 「そんなの、すぐに消えてしまいます。こっちでイクほうが、扱いてイクよりずっと快感が強いらしいですよ」 「そんなら、おまえがそうなれよ……ああっ」  内壁の一点を突かれた犬養の腰が跳ねた。 「犬養さんのいいとこ、見つけました」 「見つけなくてい、いぁあっ、そこ……んぅ……やめ、あっ、ああ」  ウキウキと、宇佐美は犬養の亀頭を揉んで先走りを湧かせながら、秘孔を探った。愛撫でたっぷりと抽出した犬養の先走りで濡れた指は、秘孔を解す指の動きをスムーズにする。楽し気な宇佐美を恨めしく思う犬養ができることは、縛られた腕をほどこうとするのではなく、宇佐美を足で押しのけることだけだった。 「くっ、う……もう、やめろ……おおぅふっ!」  蹴り上げようとした犬養の亀頭が強く握られ、秘孔の敏感な場所を擦られた。快感に萎えた足は宇佐美を蹴ることができすに、大きく開いた形で床に落ちる。 「こんなに大股を開いて僕を誘ってくれるなんて、いやらしいですねぇ、犬養さん」 「やっ、あ、違う……違、ぁ、ああ」  秘孔から指が抜けて、太ももを押さえつけられた犬養は、迫る宇佐美のおだやかな表情に、うすら寒さを覚えた。 「う、宇佐美……冗談だよな」 「冗談で、こんなことをすると思っているんですか?」  犬養の秘孔に、宇佐美のたぎり切った切っ先が押し当てられる。ヒッと喉奥で悲鳴を上げた犬養に、宇佐美はやさしいキスをした。 「怖がらなくてもいいですよ。犬養さん、こっちは未経験なんですよね……うれしいなぁ、犬養さんのアナル処女をもらえるなんて」 「やめ、やめろ……宇佐美」 「どうしてですか? あんなに情熱的な目で、僕を誘い続けてくれたのに」 「それは……逆だ! 俺は、おまえに食われたかったんじゃない」 「わかっていますよ。犬養さんは狼だから、僕を捕食する気でいたんですよね。だけど、残念。こんなに可愛い人が、僕を食べられるわけないじゃないですか」  グッと切っ先が犬養の秘孔を広げる。ヒェエと情けない声を上げて、犬養は慌てた。 「お、おまえ……兵藤さんとか、ほかにも色々、関係を持っていたんじゃないのかっ! 食われる側だろう」 「ああ、あのウワサですか。あれ、ぜんぶデマですよ」 「デ……デマ?」 「そうです。僕を見る犬養さんの視線、全員が気づいていたんですよ? そのくらい熱視線を送ってくれる犬養さんと、甘い関係になりたいと相談したら、みんなが協力をしてくださったんです。犬養さんが、僕に手を出しやすいように、デマを流してくれたんですよ」 「はへっ? そ、それじゃあ……もしかして、資料室に行くってのも」 「察しがいいですね。社長も了承済みです。あんな視線を振りまかれたら、触発される社員がいるともかぎらない。それなら、さっさと結ばれてしまえばいいって」 「はぁー?!」  資料室にこだまするほど大きな声で、犬養は叫んだ。 「ちょ、ちょっと待て。てことは、これは社員全員が承知してるってことか?」  ダラダラと冷や汗をかく犬養に、宇佐美は「安心してください」とほほえみかけた。 「誰も、僕があなたを抱く側だなんて思っていませんから」 「当たり前だぁああ!」  叫んだ犬養は体中をくねらせて逃れようとした。 「逃がしませんよ」  低くささやいた宇佐美の陰茎が、ずっぽりと犬養の内側に差し込まれる。 「あぎっ、ひ、ぐ、ぅうう……お、ほぉうあぁあああっ!」  挿入の衝撃に、犬養は遠吠えしながら精を漏らした。ギュッと締まった内壁に、宇佐美がうめく。 「く、ぅ……ああ、そんなに絞めつけられたら、もっていかれそうです」  絡みつく内壁から逃れるように、宇佐美はガツガツと腰を打ちつけ、陰茎を肉壁で扱いた。内側を擦られ突かれる犬養は、情けない声を上げて初体験に涙する。 「んはぁあっ、あっ、うくぁあ……宇佐美ぃ、あっ、やめ、ああっ」 「ふふ……いい声ですね、ゾクゾクします。可愛いですよ、犬養さん」 「は、ぁああううっ、ん、イッ、イクぅ……あっ、ああ、で、出るの、止まんねぇっ」 「そんなに気持ちがいいんですか? 光栄です」 「ひふっ、違ぁ、ああうぅっ、奥ぅ、やめ、あっ、ゴリゴリすんな、ああっ」 「されたい、の間違いでしょう? 奥を突いたら、僕の陰茎にうねるようにすがりついてきて……ああ、すごい」  恍惚とした宇佐美の声が、犬養の耳に吹き込まれる。目の前で揺れるタレ耳を噛み千切ってやろうと、犬養は牙を剥いた。察した宇佐美が内壁を亀頭でえぐる。 「はぎっ、ぃああ」 「ひどいですね、犬養さん。僕を噛み千切ろうとしたでしょう? いくら狼だからって、一応は人なんですから、獣の本能をむき出しにしないでくださいよ」 「そ、ぅ言うおまえは……どう、なんだ、ぁあっ」 「僕? 僕のどこが、獣の本能をむき出しにしているんですか」 「んっ、いま……あっ、ああ……俺を、犯し、て……ひ、ぁ、そこぉ、やめっ」 「たしかに、性欲が強いという部分は、ウサギとしての本能に根付いているかもしれません。ですが、ウサギは狼を抱こうなんて思いませんよ? これはきわめて人らしい行動だと思います」 「ふ、ぁううっ、人だってんなら、ぁ、これ……強姦、だろぉ」 「犬養さんが言えた立場ではないでしょう? 僕を襲おうとしていたくせに」  グインと腰をひねって、宇佐美は陰茎で大きく円を描いた。内壁を深くえぐられ、犬養は盛大な悲鳴を上げる。 「ひぎぃあぁああっ、やめっ、あ、それ……く、はぁうう」 「クセになりそうでしょう? 終業まで、あと三時間弱ですよ、犬養さん。その間、たっぷりと仲良くしてもいいって社長から許可を得ていますから、僕がいないと生きていけない体に、してさしあげますね」 「んふぁあ、あっ、あぉおう、く、ぅうんっ、あ、宇佐美ぃい」 「恨みがましい声も、最高に愛らしいです、犬養さん。その牙で噛み千切られるのではなく、甘く噛まれるようになるために、がんばりますね」 「が、んばらなくて……い、いい、ぁ、あはぁああ」  ひときわ深く貫かれた犬養が二度目の絶頂を迎えると、締まった内壁に陰茎を絞られた宇佐美も達した。 「犬養さんっ」 「く、ぁあああっ!」  奥に熱波を受け止めた犬養は、自分の中でなにかがガラガラと崩れていく音を聞いた。ブルッと体を震わせた宇佐美の耳が、絶頂に大きく開かれた犬養の口に入って牙に引っかかる。 「いたっ、ああ……耳の先、すこし汚してしまいました」  フフッと鼻を鳴らして、宇佐美は痙攣している犬養の口の端を舐めた。 「これで、僕があなたを抱いたのではなく、捕食されたって偽造証拠ができましたね」 「ぅ、は……もう、抜けよぉ」  グズッと鼻を鳴らした犬養は、己の情けなさに打ちのめされていた。まさか食う予定の相手に、ろくな抵抗もできずに食われるとは思わなかった。  落ち込んでいる犬養をよそに、上機嫌の宇佐美は鼻先で犬養の頬の毛をまさぐった。乱れた体毛を舐めて毛づくろいし、また鼻先で乱して遊ぶ。 「犬養さん」  艶めいた息を吹き込まれた犬養は、水浴びをした後のように体を震わせた。 「もっともっと、腰砕けになるまで僕のペニスであなたの中を、開発して差し上げますよ」  言いながら、ゆるゆると宇佐美は腰を動かした。 「ふぁ、あっ、宇佐美……待て、ちょ……んっ、腰砕けになったら、動けなくなる、だろぉ」 「肩を貸してあげますから、大丈夫ですよ」 「ひぅ、あっ、く、ぅうんっ、動く、なぁ……やっ、ぁ、宇佐美ぃ」 「そんなに可愛い声で呼ばれたら、ますます興奮してしまうじゃないですか。犬養さんって、本当に僕をあおるのが上手ですね」 「あおってなんか……あっ、ああ、宇佐美っ、や、もう、出したんだからいいだろう」 「忘れたんですか? 終業時間まで、許可をもらっているんですよ。時間は有効に使わなくては、ねぇ」  剣呑な響きのある淫靡な息を耳に注がれて、犬養は人の声ではなく狼の声で遠吠えをした。

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