17 / 21
Ⅲ 競パンHERO's③
少年!
俺は、対面に座っている少年を知っている。
「あーっ」
お化け屋敷でぶつかったチビッ子だ!
ここにいるという事は、お迎え待ちか。
迷子放送にご両親が気づくといいな。
……ん?
チビッ子、最終面接がどうのいってなかったか。
「怪談を聞いても全く怖がらない肝の座り様。お見それしました。
橋本様、おめでとうございます。最終面接合格です」
さっきの怪談だったのか……
気づかなかった。
にっこり微笑んだのは、俺を半ば無理矢理連れてきた、お化け屋敷係員のスーツのお兄さん。
あの~
「最終面接って、なんですか?」
「僕はこういう者だ」
両手で丁寧且つ優雅に差し出された名刺
あれれ?
名刺を差し出してるのは、お兄さんじゃなくって、チビッ子だ。
ええっと~、なになに?
『牛若PJ 副社長 潮 源氏 』……!!
チビッ子、迷子じゃなかったのかー★
「うううー」
「牛若PJで御座います」
「それーっ」
にっこり、お兄さん。
俺は絶叫する。
牛若PJといったら、日本のエンターテインメント業界を牽引する超有名企業じゃないかーっ!
「副社長ォーッ」
チビッ子が★
「由比ヶ浜お化け屋敷は当社のプロジェクトだ。君のお化けの才能に、僕は惚れた」
えっ……
「見せてもらったよ。吸血鬼ゾーンでの君の活躍を」
「ええぇッ」
「お客様の悲鳴は本物だった。君は、お化けになるために生まれてきたんだ!」
「はいー?」
「君を雇いたい。契約書にサインを」
ちょちょちょッ
あれは不慮の事故!
お客さんは怖がってたんじゃなくて、黄色い悲鳴なのーっ
「俺、働きませんから!」
「世界に名だたる我が企業を、袖にするとはいい度胸だ」
「うっ」
副社長の雰囲気が変わった。
……怖い。
この空気……副社長の方が、よっぽどお化けに合ってると思うけど~
「いいだろう。君を吸血鬼ゾーン(R18)主任に任命する」
「は?」
「君の力でお化け屋敷をもり立ててくれ。期待しているぞ」
ポンっ
背伸びして、俺の肩叩くなーっ
役職がほしいんじゃない!
ほんとにほんとに、お化けになりたくないんだー!
……副社長、吸血鬼ゾーン『R18』って言わなかったか?
「打ち合わせは、そこの織部 としてくれ。彼がリハ相手も兼ねている」
打ち合わせ?
リハ?
なんの事?
「それでは橋本様、早速打ち合わせに入りましょう」
なんでー!
どうして、お兄さんまで脱ぐんだーッ
織部さんも競パンだ。
パープルの……
……って、んな事どうでもいいわっ
「織部さんっ、服着てください」
「脱がなければリハできませんよ」
にっこり
優しい眼差しに……
ゾゾゾー♠
背筋に冷たいものが走った。
リハって、リハって~
にっこり微笑む織部さん
「橋本君の担当は受けです」
俺は吸血鬼(R18)ゾーン主任!!
エッチなリハだーっ!!
ともだちにシェアしよう!