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第6話
広場に立つスピーカー塔から、盆踊りの曲が流れる。
建設中の櫓 を中心に、円形状に取り囲む学生達。
内側の円は小学生。外側は中学生。
練習ながら、放送を聞きつけた近所の年配者が、ぽつぽつと公園入り口に集まって雰囲気を楽しんでいた。
「最近、物騒な事件があったから、気を付けて帰るんだぞ!」
約三十分程度の練習が終わると、夏祭り主催者の大人達が大きな声を上げ、注意喚起を促す。
「そうそう、事件あったよね」
「事件?」
「……えー、知らないの?」
近くにいたクラスメイトの女子達が、顔を突き合わせてその話題に触れる。
その中には、麻生と山口の姿もあった。
「隣町で起きた、通り魔事件」
「……ああ、それね!」
「しかも、被害者は……うちらと同じ、女子中学生なんだよぉ」
お団子ヘアの膨よかな、伊藤蘭。三つ編みヘアの眼鏡っ子、斉藤凛。低身長のおかっぱ頭、須藤恋。
よく連むこの三人は名字の『藤』と名前の最後の『ん』が同じ事から、婦人 組と呼ばれていた。
「……そうそう!」
「犯人は、まだ捕まってないんだって……」
僕の横を通り過ぎる、二人組の男。その話題に混じりながら、女子達の輪に近付いていく。
「……なー、透?」
背の低い男の肩に腕を回していた、タンクトップの男──長田 正臣が、首だけ振り返って僕に明るい笑顔を見せる。
スポーツ刈りの野球部員。半袖を肩まで捲り上げ、晒された二の腕すら浅黒い。
普段から上下関係なく、誰にでも気さくに話し掛ける、三年の先輩。
「……え!……あ、はい。……そうみたいですね」
突然振られたせいで、一瞬笑顔が引き攣 ってしまった。
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