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第8話

「……ぶっ、」 その瞬間。無表情に徹していた全員が吹き出し、ケラケラと笑い声を上げる。 「ナイス、晴義!」 「……ごめんね。大丈夫、紗栄ちゃん?」 長田先輩が笑顔で親指を立てると、冗談が過ぎたとばかりに、千明先輩が心配そうに麻生の顔色を窺う。 その横顔を、チラッと盗み見る長田。 「……もぅ、……晴くん。心臓に悪いから、止めてよ……」 「──そ、そうだよ。窪塚くん」 両手で胸を抑えながら、背後に立つ男を責め立てる麻生。 一度振り払われた麻生の腕を、必死で掴んで庇う山口。……さっきまで、他のみんなと同じように笑っていた癖に。 「……悪かったって」 口の片端を持ち上げ、少しだけ強気な態度で謝る──窪塚晴義。 襟足の長い茶色掛かった髪。切れ長の涼やかな瞳。左の目尻には、ふたつの涙黒子。バスケ部に所属し、学校一のモテ男と称される程のイケメン。 「まぁ。これでも、マジで心配してるんだからさ。……許してよ、紗栄」 後頭部に手をやり、悪びれる様子もなく窪塚がそう言ってのける。 「……もぅ、調子良いんだから」 腕組みをし、呆れた声を上げる麻生。 その様子を、ニヤニヤしながら遠巻きに見つめる、婦人組の三人。 「て事で、紗栄。……一緒に帰ろうぜ」 窪塚の腕が、当たり前のように麻生の肩に回される。必然的に追いやられる山口。渋々退くものの、恨めしそうに二人を見つめる。 「……うん」 男子人気の高い麻生と、学校一モテ男の窪塚が並べば、誰がどう見てもお似合いのカップル。 「え~~!!」 「あれあれぇ?!」 先に食いついたのは、婦人組の蘭と恋。直ぐに凛も混じって、キャアキャアと騒ぎ出す。 「もしかして晴義、麻生さんと付き合ってんの……?」 「……えっ、そうなの?!」 長田が窪塚を揶揄えば、その言葉を真に受けた千明が、驚いて真剣な目を向ける。 「あー、違う違う。紗栄とは帰り道が一緒なだけ」 「……へぇー」 「それに俺、年上の彼女いるし」 「……えぇっ~~!!」 窪塚の突然の暴露に、全員が一斉に驚きの声を上げる。

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