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第27話

しかし、よくよく中を見れば、並んだ机上には、様々な資料やファイルが積み上げられていた。 「……」 廃校じゃ……ないのか? ……それに…… この教師は、全く僕と目を合わせようとしない。まるで、最初から僕がここに存在していないかのように。 不可思議な現象の数々に、理解が中々ついて行けない。 「……小山内先生は、来ていらっしゃいますか?」 小山内──? 白川の口から飛び出した名前に、驚く。 僕の知っている小山内は、ガチムチのおっさんで、男性ホルモンが強く女子から嫌煙されている。保健体育の授業で性教育をしてからは、特に。 「小山内先生なら、今日は来ていないよ」 「……」 「もしかして……約束でも、していたのかな?」 教師が、少し屈んで白川の顔を覗き込む。 と、その視線を避けるように、直ぐに伏せられる。 「………はい」 その頬が、心なしか薄ピンクに染まっていた。 「手紙を、貰ったんです。……今日、その……会って話したい事があるから、学校に来て欲しいって……」 「……そうか。小山内先生に連絡は、してみたのか?」 「……いえ」 「番号、知らないのか」 「はい」 「……そうか」 困った、とばかりに天を仰いだ教師が、眼だけを動かして白川をチラと見る。 照れながら伏せられた顔。手には大きなバッグ。その持ち手に掛けられた指に、キュッと力が籠められたのが見て取れた。 「……ところで。その荷物は……」 スッと白川が、そのバッグを後ろに隠す。 「……これ、は……」 「……」 「迷惑かも、しれませんが。先生の所に、泊めさせて貰おうかと、思って……」 「……」 はにかみながらそう言った白川に、顔を戻した教師の顎先が少しだけ持ち上がる。一体、何に動揺しているんだろう。少しだけ震える中指で、眼鏡のブリッジ部を押し上げた後、その手をスッと白川の前に出す。 「先生なら、いつでも大歓迎だよ」 「……えっ、いえ。……先生の事じゃなくて。……その、小山内先生の……」 驚いて持ち上げた顔が、再び伏せられる。その教師との間に、一線を引くように。 「……そう、か……」 「……」 「確か、引っ越し先は遠方だと聞いてる。……長旅で疲れただろう。小山内先生が来るまで、少し休みなさい」 「………はい」 ぎこちない空気の中、そう言って教師は白川を中へと招く。 他には誰もいない職員室。 奥にある、パーティションで仕切られた応接間のソファに座り、持っていた荷物を床に置いた。

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