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「代償」9

 そうなると必然的に朝の会話が原因だとバレてしまい、失言だったと自分を責める泰明に僕は申し訳無さが込み上げる。それでも食事が喉を通らず、箸が思うように進まない。  夏バテと誤魔化して半分ほど残っている冷やしうどんは、泰明が食べてくれた事で食器を無事に返却する事が出来た。  僕は食事を残すことが嫌で、よっぽどのことがない限り無理してでも食べる。なかなか箸が進まない僕を見かねた泰明が「無理するな」と言って食べてくれなかったら、僕は次の時間もうどんを食べ続けていたかもしれない。  昼食を終えて食堂を出ると、長い廊下を二人で並んで歩いてく。僕の頭の中は家に幽霊がいるかもしれないという事ばかりで、相変わらず上の空な状態だった。 「放課後は予定あるか?」  突然、泰明が強張った口調で沈黙を破った。 「ないけど?」 「だったらお前を見せたい奴がいるんだ」 「僕を?」  泰明は少し硬い表情で頷いた。 「一年で後輩なんだが、実家が神社なんだ。そいつは霊感もあるみたいだし……なんとかなるかもしれない」  まさか身近に霊感のある人間がいるとは思ってもみなくて、僕は驚きのあまり足を止める。 「その人……霊感強いの?」 「強いかどうかはわからない。俺んちの不動産屋に、たまたまそいつが客として来てだな――」  泰明はこの場所ではなんだからと言って僕の腕を引き、近くの空き教室に連れ込まれる。

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