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「代償」20

「鐘島先輩。異論はありますか?」  神近くんは了承を取るかのように、泰明に視線を向ける。泰明は不服そうな顔で僕を見つめてくるも、僕が頷くと「佐渡が良いなら」と渋々と言った様子で呟いた。 「じゃあ、ここからは鐘島先輩は手出ししないでください。まじで危ないですから」  そう言いつつ、神近くんは四隅に置かれている盛り塩を回収し始める。  何故わざわざそんなことをするのか僕には分からない。そんなことより僕は緊張のあまり、思わずへたり込んでしまう。 「大丈夫か?」  泰明が近寄ろうとするのを僕の前にしゃがみ込んだ神近くんが、手を出して牽制する。 「先輩。こっち見てください」  神近くんの声に、僕は顔を上げて神近くんを見つめる。茶色く、綺麗な瞳には青ざめている僕の情けない顔が映し出されていた。 「自分をしっかり持ってくださいね」  そう言って僕を抱き寄せると、背中を強く叩かれる。その力強さに僕は思わず、うめき声を漏らす。 「ゆっくり息を吐いてください」  言われたとおり、僕は息を吐き出していく。途端に体が軽くなり、血の気が戻るように体が熱くなる。やっぱり神近くんは本物だったのだ。

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