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「正真」5
開口一番に罵倒された僕は聞こえてはいないだろうかと、離れた場所にいる神近くんに視線を向ける。神近くんはこちらに気にしている様子はなく、視線を下に向けてパズルのピースを繋げていた。
ホッとしたのもつかの間、静まり返っている部屋に『聞いてんの?』という姉の怒った声が微かに響く。
「ごめん。すっかり忘れてた」
『あんた部活入るんだったら、遅くなるんじゃないの? 今日は誰もいなくなるんだから、鍵ないと家に入れないからね!!』
僕は姉の言葉に、家族の帰りが遅いことを思い出す。姉は彼氏の家に泊まり、母は近所の人と食事会、父は出張に出ていた。
「じゃあ、取りに行くよ」
まだ神近くんと話していないのだから、そのまま帰りっぱなしというわけにはいかない。鍵だけ取って戻ってきてから、ちゃんと話した方が良いはずだ。
『今から彼氏の家に行くから、持っていってあげる。その代り、借りは返してね』
そう言って姉は一方的に電話を切ってしまう。相変わらず何もかも一方的な姉だ。そんな姉に借りを作ってしまったことを深く後悔し、僕は重たいため息を吐き出す。
「随分と威勢の良い彼女なんですね」
神近くんは顔もあげずに、とんでもないことを口にした。
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