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「久遠」22

「おいおい。そんな簡単に言うけどなぁ、佐渡がまた狙われて危険な目にあったらどうするんだよ」  泰明がどこか怒気を孕んだ声を出す。険悪な空気が流れ、僕が宥めようとすると神近くんが窓の外に視線を流した。 「危なくなったら俺が守ります。なんなら一緒に遠くまで逃げますよ」 「……えっ」  僕は驚いて目を見開き、泰明も口を開いて固まっている。 「出てくる時は、こっちにも知らせが来るはずです。再犯ですし、そうそう簡単には出てこな いですよ。だからそれまでに、先輩とどこに行っても養えるぐらいのスキルは身につけるつもりです」  文句ありますか、といった視線を神近くんは泰明に向けた。泰明と僕は顔を見合わせる。まさか神近くんがそんな風に考えてくれていたなんて、思ってもみなかった。 「……神近くん。本気なの?」  僕が恐る恐る聞くと、神近くんは眉を寄せるも少し照れたように俯いた。 「鐘島先輩に言われて目が覚めたんです。本当は俺、兄が怖かったんです。友達や好きな人が出来たら、また兄が引き裂いてくるんじゃないかって」  神近くんが自嘲気味な笑みを浮べ、僕は息を飲んだ。今まで孤立していたのは、やっぱりお兄さんが原因だったのだろう。短い期間だったにも関わらず、お兄さんの陰湿さは僕も身を もって経験しているから理解出来た。 「でも先輩は俺を信じるって、好きだって、兄に言ってくれたんですよね。俺のことをそんな風に庇ってくれる人が今までいなかったから……」  地元での周囲からの孤立。自分を変人だと言いふらし回る兄の存在。小さい頃の写真に映し出されていた無邪気な笑顔は、あの場所では遠い記憶のようにも感じてしまう。 「本当だったら鐘島先輩に触発される前に、自分で気づくべき事でした」  泰明の前でも素直な神近くんに、僕も泰明もただ顔を見合わせるしかなかった。

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