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ある『Ω』の運命。

四方未來(しかたみらい)は、会社員の父と主婦の母そして大学生の兄と中学生の妹の 5人家族で住んでいる。成績もそれなりに優秀で学校でも教職員を始め多くの人の 信用を得ているごく普通の少年だった。 この世界には『オメガバース』が存在する。運命のつがいのαとΩ。 3ヶ月に一度くる発情期があるΩ、αは人口が少ないだとが色々言われている。 実際第2性は多くは『β』だ。未來もそのオメガバースの第2性をもっている。 だが周りの多くの人は未來は『β』だと 信じているのだが、未来自身、実際の第2性は『Ω』だ。 しかしそれが発症したと同時ある事実が未來にあった。 検査をした医者はもちろん、付き添ってれた母と兄も困惑していたのだ。 『未來君の第2性は『オメガ』なのは間違いないのですが、彼には何故か フェロモンや発情期と呼ばれるものが存在しない『オメガ』であることが 発覚しました』 その言葉に未來は、他人事のようにへーと聞いていたが、母と兄は困惑 していた。 つまりオメガにとって屈辱である発情期やフェロモンが存在しないのだ。 未來にとってオメガバースはまるで夢のような話だったので、未だに 自分の第2性がΩだと信じる事が出来なかった。 その後母と兄の希望、そして医者自身の再チェックの為に、別の 病院で検査を依頼した。会社員にそんな金がないからいいよといったら、 医者は首を左右に振って 『君は自分の身体に無関心だからこそ、周りの私達がしっかり知る必要が あるんだよ』 未來の肩に手をおいて言うので、未來はそのまま素直に受けたのだ。 2件目でも同じ結果が出てしまい、最初の病院に結果と共に送り込まれた。 それ以来、未來は必ず月1の検査を受ける生活となったのだ。 その生活も中学1年で覚醒した後からもう5年たっている。 当時高校生だった兄は、今未來を助けるために医学部の大学生になり、 中学生になった妹には告げられている。 「あー・・・今日検査か」 SHRが終わり、鞄に教材を入れていると、スマホがなった。 ぴろん♪という音と共に5年目の付き合いとなった担当医である笹垣先生 からのメールだ。 『今日は検査の日だからお昼休み後早退で来てね』 簡素なメールだけど、無気力系の未來にとってはこれが丁度いい。 了解しました。と返事を打った後、妹に一応連絡をいれておいた。 母も5年前発覚した直後に事情をしった友人の元で仕事をさせてもらっている。 今ほぼフルタイムで働いている。 医学部にいった兄と検査が必要な自分そしてまだ中学生の妹の為に 両親は共に働いているので、家にいる時間が共に増えたのは妹だけだった。 兄は名門の大学へ入ると同時に支援を断り、アルバイトしながら 一人暮らしをしている。 (ああ、どうして俺の身体こんなめんどくさい事になったんだろうな) 呆れながらも、未來はふと思い出した。午後のノートを誰かに見せてもらわないと いけないのだ。いつもそのノート番をしてくれているクラスメートを探した。 「大河!」 幼稚園の時からの幼馴染であり、何故か高校まで一緒になったくされ縁の友人の 名前を呼んだ。彼は呼ばれている事に気づいて振り向くと 「どうした?未來」 喋っていた友人にストップの手をかけていうと、未來は 「今日昼休みで早退だから、ノートまた頼んでいい?」 そういうと大河は眉をひそめた。5年前から定期的に早退する事が多くなった 未來を心配しているようで、よくそんな顔をするが、母や兄からは 『大河君にでも駄目だ』と言われていたので言う事も出来ずに5年たっていた。 「・・・分かった。また夜に家行くな」 そういうと再び友人達と話し始めたので未來もそれ以上は会話の邪魔に なるそのまま自席へと戻っていった。 母や兄が大河に言うなと言っているのは大河の第2性が『α』だからだ。 それは母が大河の母から聞いたので間違いない話だという。 つまり『オメガ』でありながら『オメガ』の機能を持たない未來の 傍に優秀な『α』の大河がいるのは危険だと笹垣先生も警告しているのだ。 どういう状況で未來の『オメガ』が発動するかわからない上に、 親しい人だからこそ余計に警戒がいると散々言われてきたのだ。 そういわれてしまえば未來も素直に『分かったよ、先生』と隠して おかねばいけなかったのだ。 未來はお昼休み前の授業を終えるチャイムと同時に、鞄を持って 教室を後にした。 その後ろ姿を大河が険しそうな顔をしてみていると知らずに。 いつも通り、笹垣先生の専用の診察室へ行き、検査をした。 5年前から少しずつ微妙な結果がありながらもほぼ変わらない結果を見ながら 笹垣先生は言う。 「本当にみぃくんの第2性は不思議だね。まるで、かくれんぼしているみたいだよ」 慣れたかのようにいう先生の言葉に未來は溜息をつきながらも 制服に手を通して 「先生、もう大河に「駄目だよ」・・・どうして?」 高校入ってから何度もお願いしては却下されている質問をするが、すぐに却下された。 すると先生は電子カルテをみながら、はぁーと溜息をつくと 「あのね、みぃくん。僕は君の事が心配だから言っているんだ。それに お母さんもたまに相談してくるんだよ。やはり大河君所から離れた方がいいですか?って 妹さんがαな上、君を守っているから今はいいけど、それでもやはり娘にそんな事させるのが 気に挽けるって・・・だから君が黙っていれば済む話なんだよ」 何度言ったかわからない話をしながらいうと、未來はボタンをとめながらも 「・・・分かってるけど・・・大河、ずっと俺が早退する度見ているから・・・」 ぼつり呟いた。その言葉に先生は、ん?という顔をしながら未來を見た後、 なるほどねという顔をすると、未来に向かっていった。 「・・・好きなの?彼の事」 そういうと未來はは?という顔をすると同時に、頬を赤くすると 「ち、ち、違います!!!そんなもんじゃないです!!!」 叫ぶように言った。すると先生は小さく笑うと、未來の頭に手を置いて 「・・・揶揄って御免ね。取り敢えずこれいつもの薬だよ。また処方しておくから かならず妹さんにも予備渡しておくんだよ?じゃぁまた開いた時に呼ぶよ」 そういうとそのままお大事にと診察室を後にした。 家に帰れば妹が帰ってきていて、オムライスを作ってくれていた。 先生から預かった薬を妹に渡すと彼女はいつも通り預かってくれた。 「ごめんな、ややこしい兄貴で」 苦笑しながらいうと、妹は笑いながら 「お兄ちゃんは私が守るって決めた以上はややこしくないよ!・・・ 後大河君がノート届けにきてくれたよ。ルーズフリーズにかいてくれた みたいだから返却いらないって」 そういうと未來はテーブルにおいてある紙の束をみて目を伏せると 「有難う。未祐(みゆ)、オムライスありがとうな。今食べるよ」 そういうと未祐は 「取りあえず温めておくからお兄ちゃん、着替えておいでよ」 そういうので未來は素直に好意を受けてルーズフリーズの紙の束を持って 部屋に向かった。 部屋の電気をつけ、先生に渡された薬を開けて飲む。 ごくんと飲み込んだのを確認すると同時急いで薬を片づける。 だから気づかなかった。 彼が窓から自分の部屋を見ている事に。

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