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第2話 覚醒

山で見た光景は、小学六年の僕には刺激が強すぎた。 しばらくは夢に背の高い男が出てきて、僕を不眠症に陥れた。おかげで目の下にクマが出来てしまい、親に「夜更かししてないで早く寝ろ」と、理不尽に怒られた。 でも所詮まだまだ単純な子供だから、一週間もすると、男の顔も薄れてぐっすりと眠れるようになった。だけど新たな問題が発生する。男の夢を見なくなった代わりに、木につかまって悶えていた男の高い声が、頭の中で繰り返されるようになった。 ーー男にヤられていたあの人…、すごく気持ちよさそうだった。でも入れるところって…一つしかないよな?え…ウソ…あそこに入れんの?あそこって、気持ちいいの? 数日間悶々と考え込んだ結果、僕は好奇心に負けて、ついに尻の穴に指を突っ込んでしまう。 この日から、毎晩風呂場で尻を弄った。そのままだとキツいから、ボディーソープを指に垂らして、最初は一本の指の先だけを入れた。一ヶ月かけて少しずつ深くしていき、そのうちズプリと根元まで入るようになった。そしてまた一ヶ月かけて二本目の指を入れ、もう一ヶ月で三本目の指を入れた。 そんな風に尻の穴を柔らかくし、中の気持ちいい場所を知り、何年も何年も弄っていたら、いつしか前を触るよりも尻の穴を弄るだけで、射精が出来るようになってしまった。 初めて尻だけでイッた時の、快感と衝撃は忘れない。 ーーはあっ!あ…ぅ、超気持ちいい…。ふぅ…、え、あれ?ま、待って。僕、童貞なのに後ろだけでイけちゃった?ど、どうしよう…っ。僕、もうちんこじゃイけないかもしれない…。 そんな自分の性癖にひどくショックを受けたあの日から五年が経ち、僕は大学ニ年になっていた。 七月に入ったばかりのある朝、学校へ向かう電車に乗っている時だった。結構車内は混んでいて、僕はドア付近の手すりに掴まって立っていた。すると、僕の尻を触ってくるヤツがいる。グイッと腰を動かして手を退かそうとするけど、手はしつこく僕の尻を撫で回し、そのうち強く揉んで割れ目に指を押し込んできた。 逃げたくても満員で動けないし、振り向いて文句を言いたくても、尻を触られながら身体もがっちりとホールドされて身動きも出来ない。 そうこうしてるうちに、手が僕のズボンの上から差し込まれて、下着の上から尻を触り出した。 早く駅に着けっ、と願うけど、こういう時ほど一分一秒がとても長く感じるんだ。 恐怖と情けなさで目に涙が滲み始めたその時、低い声が聞こえて、尻から手が離れた。

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