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第4話 愉悦

その週の週末に、僕は大橋さんに電話をかけて会う約束をした。 僕が「お礼は何がいいか」と聞くと、大橋さんは「映画が観たい」と言ったので、二人で映画を観に行くことになった。 当日の昼過ぎに、駅で待ち合わせをして映画館へ向かう。シンプルな白のTシャツにスキニーのジーンズ姿の大橋さんは、思わず見惚れてしまうほどカッコよかった。青のTシャツに薄茶色のクロップドパンツの僕が、なんだか子供っぽく見える。 並んで歩きながら、どうやら僕は、ボーッと大橋さんを見つめていたらしい。 「どうしたの?朔くん?」 「はっ!す、すいませんっ。大橋さんが…モデルみたいにカッコいいから、つい見惚れて…」 大橋さんは、一瞬目を見開いた後にふわりと笑って、僕の頭を撫でた。 「カッコいいって思ってくれるの?ありがとう。朔くんも、カッコいいよ。でも君は、どちらかというと綺麗だよね」 「ええっ!綺麗なのは大橋さんの方です…っ。ぼ、僕は普通ですっ」 「ふふ、そう?君は可愛いね…」 「かっ…、も、もうっ、大橋さん…僕をからかわないで下さい…」 大橋さんが、僕をベタ褒めするうちに映画館に着いて、僕は熱い顔を隠すように早足で中に入った。 映画はシリーズのアクションもので、僕も観たかったヤツだから、とても面白かった。 映画館を出て感想を言い合いながら歩いていると、大橋さんがお洒落な店の前で足を止める。不思議に思って大橋さんを見上げると、背中を押されて店の中へ入るように促された。 僕は、店の中をキョロキョロと見回す。と、大橋さんがクスリと笑って、また僕の頭を撫でた。 「ちょっと早いけど、夕飯を食べようか?」 「あ、はい…。でも、こんな高そうな店、僕…お金がないかも…」 「ああ、支払いは気にしなくていいんだよ。俺が来たくて勝手に連れて来たんだから」 「えっ、でも…、それじゃお礼が…」 「お礼なら、さっきの映画館で代金払ってくれただろ?それでお礼は終わり。これは、お礼のお礼だから」 「そんなぁ…っ。じ、じゃあ、僕がまた今度、お礼のお礼のお礼をしますっ。だから、また会って下さい」 「もちろん。朔くん、また会ってくれるの?嬉しいな。じゃあ来週も会う?」 「はいっ。次は何がいいですか?」 「うん、また考えて連絡するね。じゃあ来週、約束だよ?」 「はいっ」 僕は、大橋さんとまた会う約束が出来たことがとても嬉しくて、ずっとニコニコとしたまま、美味しい料理を堪能した。

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