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第59話

***  自力で宿題を解いていた関係で、浩司兄ちゃんが指定した時間より少し遅れて、部屋にお邪魔した。  床に座って、持って来ていた教科書類をローテーブルの上に出したのに、浩司兄ちゃんが背後から僕に抱きつく。 「龍とこうしてくっつくの、一週間ぶり?」 「うん、そうかな」  照れ隠しすべく、ぬるい声色で返事をした。捕まえたと言わんばかりの抱擁に、口元が緩んでしまう。 「俺に触れられたくなかった?」  僕に訊ねながら、浩司兄ちゃんの片手が下半身に伸びる。 「くっ!」 「カタチ、変わってる。まだなにもしてないのに」  耳元で告げられる自身の事情に、頬が赤くなるのがわかった。 「されてるよ。浩司兄ちゃんに抱きつかれてる」  恥ずかしさで俯きつつ、なんとか文句を言ってみる。 「でも感じるところには、一切触れてないのに?」 「だって、一週間ぶりだから」 「自分でシなかったのか?」  傍にある端正な顔を横目で見ながら、事実を告げる。これを言ったら、浩司兄ちゃんはどう思うのかな。 「浩司兄ちゃんを思い出すからシてない」 「かわいいことを言うのな」  くすくす笑って、浩司兄ちゃんの顔が僕の顔を覆った。この時点でキスされることがわかったからこそ、近づいた唇に慌てて手を添える。 「ダメだよ、宿題を先にしなきゃ。本当に困ってるんだってば……」  ここに来る前に、自宅で果敢に挑んでみたものの、まったくわからず仕舞いだった。卑猥なことがなし崩し的にはじまってしまったら、宿題なんてそっちのけになるのが、絶対にわかりすぎる! 「カタチの変わった龍のココ、放置するのはかわいそうだろ」 「我慢する、だから触らないで」 「俺にもガマンを強いるんだ?」  僕の腰に、浩司兄ちゃんの大きくなったモノが擦りつけられた。布越しでも伝わってくる、浩司兄ちゃん自身の熱り勃つ状態で、すごく我慢してることがわかったけれど。 「浩司兄ちゃん、僕が困ることばかりしないでほしい」 「困っているというよりも、物欲しそうに俺の目には映ってるけど?」  躰は与えられる気持ちよさを覚えてしまっているので、欲しくないといえば噓になる。 「困ってる感情と、浩司兄ちゃんが欲しい感情のふたつがせめぎ合ってるよ」 「そっか、偉いな龍は。ちゃんと我慢しようとしてるのを、俺も見習わないと」 「ンンっ!」  見習わないとと言ったそばから、僕にキスをした。強く押しつけられる唇と割り込んできた舌が、簡単に僕を翻弄する。 「ぁあっ、こ、おじ兄ちゃ…らめらって」 「キスだけでやめる。こればっかりは、ひとりじゃできないだろう?」  感じさせるように蠢いていた舌を引き抜き、背後から前に移動して、きちんと僕に向き合ってくれる。 「ホントに、キスだけでやめられるの?」 「龍をこれ以上困らせたくない、本当だよ。とりあえず舌を出してみて」  言われたとおりに、唇から舌を半分だけ出した。浩司兄ちゃんは嬉しそうな面持ちでそれを甘噛みしつつ、ちゅっと吸いあげる。 「!!」  まるでアレをするように頭を動かして、僕の舌を浩司兄ちゃんの口内に出し挿れする。じゅぷじゅぷわざと音をたてるそれに、僕自身が反応しちゃって、痛いくらいに張り詰めていく。 「んうっ…あんっ」  力がどんどん抜け落ちていくせいで、浩司兄ちゃんにしなだれかかった瞬間だった。なんの前触れもなく、目の前にある扉が開いた。 「兄貴、悪いけど宿題っ……わっ!」  抱き合う僕らと怜司が相対する形になって、一気に場が凍りつく。咄嗟に浩司兄ちゃんが僕を背中に隠しながら、大きなため息をついた。

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