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僕のカバンの中には
昨日作ったチョコが入っていた
焦げ茶色の包装紙に包まれた小さな箱…
渡す機会を逃し
とうとう放課後になってしまっていた
「……あ…」
帰ろうとする杉浦の姿が見えた
僕は慌ててカバンを持つと杉浦の後ろ姿を追いかけた
「…杉浦くんっ」
廊下に出てすぐに呼び止めた
杉浦はあまり話した事のない僕を見て少し驚いた表情を見せた
ドクンドクン…
「……あの…」
カバンから箱を取り出す
「なに?」
「…コレ……」
僕は緊張しながら
杉浦を見上げた
「チョコ?」
「……うん」
「誰かに貰ったやつ?」
……え…
違……
「…俺も貰ったけど……
実は甘いの苦手なんだよね…」
「………」
そう…なんだ……
…じゃあ…甘い匂いも…?
僕の髪の匂いも……
僕の身体の匂いも…
…僕自身……
「それじゃ…捨てちゃうの…?」
受け取っておきながら
女の子の気持ち…
全部――……
「食べるよ、全部
断れなかった俺のせいだから」
杉浦を見上げると
杉浦は優しく笑った
そして僕の髪をくしゃっと触る
何故そうされたのか解らないけど
体が熱くなった
僕は視線を外し
少しうつ向く
「杉浦くんは…
付き合ってる人とか…
好きな子…いないの?」
何でこんな事……
「…いるよ」
ズキ…ン…
いるのに何で…
何で女の子たちからチョコなんて…
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