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お題/ワイン
~総一郎 × 蹴人~
インターフォンが鳴った。
時計を見ると23時を過ぎていた。
このような時間に誰が…
眼鏡を外して、パソコンを閉めた。
折戸は合鍵を渡してある為、インターフォンを押す事は考えにくい。
蹴人は大学の飲み会があると言っていた。
不思議に思いつつインターフォンのボタンを押した。
「おーい、開けろー。早く開けろー。開けないと死ぬぞー。」
画面に写ったのは、大きな声で手を振る蹴人だった。
「すぐに行くから待っておいで。」
間違いなく酔っている。
俺は鍵を片手に部屋を出て、エレベーターに乗り込みエントランスへと向かった。
自動ドアの向こう側に、壁に寄り掛かるようにしてしゃがみ込む蹴人を見つけた。
顔を上げた蹴人は、この状態でこのマンションまで一人で来た事が心配になる程のフェロモンを放っていた。
「…遅いぞ、総一郎。」
「…ッ…!!」
思わず目を見開いた。
蹴人が、俺を名前で呼ぶなど初めての事だ。
「なぁ、総一郎…立てない…」
そのように言うと、俺に向かって両手を広げた。
この世の中には、似た人間が三人居るとはよく言うけれど、俺の目の前に居る人物は蹴人とは別人なのだと思えてしまうくらいに、いつもの彼とは違っていた。
「仕方がないね、おいで。」
蹴人の手を取り立ち上がらせると、腕が俺の首元に回された。
「…総一郎、会いたかった…」
「俺も、君に会いたかったよ。」
「帰ったなら…すぐ連絡しろ…」
「今日は大学の飲み会があると…」
「総一郎、お前、もう黙れ…」
そう言った瞬間、蹴人に引き寄せられて唇が触れた。
この状況は夢だろうか?…とさえ思えてしまう。
俺を名前で呼んでくれただけでなく、会いたいなどと言ってくれた。
普段の蹴人ならば、俺を苗字で呼び、例え思っていてくれたとしても会いたいなどと口にする事はない。
蹴人の口内はお酒の味と匂いが広がっていた。
飲頭でも打ってしまったのではないのかと心配になり、蹴人の頭を撫でながらコブや傷を探したが見当たらなかった。
「…部屋へ行こうか?君の可愛らしい顔は俺が独り占めしたいからね。ここでは誰かに見られてしまうよ…」
「総一郎、だっこ…」
「困ったね、本当に…」
しがみ付いてくる蹴人を抱き上げて部屋へと戻った。
その間も蹴人はずっと俺に戯れ付いていた。
俺の知らない間に蹴人に何があったというのだろうか…
「総一郎…」
耳元で水音が響いた。
蹴人の声は今まで聞いた中でも一番甘いものだった。
「あまり舐めるとくすぐったいよ、蹴人…」
「総一郎がいつもするからだ…気持ちよくて好きだ…総一郎は気持ちよくないのか?」
「ん…俺も気持ちが良いよ。君が俺にしてくれる事は全て嬉しくて、気持ちが良い…」
「総一郎…好きだ…」
「俺も好きだよ、愛している…蹴人…」
例え、今の状況が夢や酔いから来るものであったとしても構わなかった。
相手が蹴人であるならばその他の事などはどうでもよい。
部屋に着いても、蹴人の様子に変化はない。
ソファーへ下ろそうとしても、俺にしがみついたまま離れようとはしなかった。
仕方なく、蹴人を抱いたままソファーに腰を掛けた。
「総一郎、触ってくれ…」
蹴人は、自らシャツを捲って既に主張している乳首を露わにした。
「君はいつからこのように破廉恥になったのだい?」
「…お前のせいだ。お前が…いつも触るから…」
「俺以外にこのような事をしてはいけないよ?」
「お前だけだ…だから、早く触ってくれ…」
「あまり急かさないで…まだ夜は長いのだから…」
俺は目の前の可愛らしい乳首を含んで弄んだ。
いつもならば、何も考えられないくらいにトロトロになるまで必死で堪えている声も、今日はその口元から引っ切り無しに溢れた。
お酒の匂いと熱い息や体温、そして甘い喘ぎに俺まで酔いそうだ。
「あ、ぁ…そ、ちろ…」
「うん?…気持ちが良いかい?…」
「ぁ、んぅ…気持ち…ッ…あ…ぁ…」
蹴人から溢れる言葉はどれもこれもが新鮮だ。
ソファーの下に散らばった衣類は全て蹴人が散らかしたものだ。
俺としては出来るだけ負担を軽減してあげたいと思いベッドへ連れて行きたかったのだけれど、蹴人にこの場所で強請られてしまった。
自ら俺の服に手をかけて不器用に脱がされてしまってはわざわざベッドへ行く理由もなくなってしまう。
「蹴人、あーんして?」
蹴人が口を開くと覗いた舌に絡ませて唇を塞いだ。
「ん、んン…ッ…ふ、ぁ…」
蹴人はといえば、腰を振りながら夢中で俺と蹴人のモノを握り擦り合わせるようにして扱いていた。
俺は蹴人の口元から溢れた唾液を掬って指に絡めるとそれを秘部にあてがって埋めた。
その場所は少し狭くなっているように感じた。
久しぶりの行為だ。
狭くなってしまうのも無理はない。
「蹴人、久しぶりだからかな、少し狭くなっているよ…沢山解してあくげようね?」
「ッは、ぁ…広がって…る…」
「そうだね。しかし、まだ一本目だよ…」
「え…も、キツ…」
「大丈夫…君が気持ち良くなっている間に、沢山慣らしてあげるよ…」
自身を扱きながら俺の上で激しく悶えている蹴人が可愛らしい。
この様子だと自慰を控えていたように思える。
先程からもう何度達したのか、俺と蹴人の間は白濁でドロドロになっていた。
俺はどうせ達してしまうのならば蹴人のナカがよいと堪えていたのだけれど、蹴人の指に巧みに愛撫され何度か達してしまった。
浅い部分を擦り、ゆっくりと解しながら徐々に指を増やした。
ナカが吸い付いて来る。
甘えているようで可愛らしい。
俺は、ゆっくりと指を抜いた。
「ん、ンぁ…」
敏感になっている蹴人が身体を震わせた。
そして、溶けるようにグズグズになった蹴人を抱き上げて寝室に向かうとベッドに組み敷いた。
「蹴人、可愛らしいね…本当に…」
ゆっくりと俺のモノを蹴人の秘部にあてがった。
「はぁ…なぁ、挿入れるのか?…」
「そうだね…」
「早く、…くれよ…」
「ッ…」
舌舐めずりをしながら誘う蹴人の期待に応えるべく一気に奥を突き上げた。
虐めたいわけではない。
沢山解して俺を受け入れる為の準備が整っている事を知っているからだ。
「ひッ…あぁぁ…」
俺の首元に回した腕に力が入った事を感じると蹴人は身体を大きくそらした。
夜が明けるまで俺にされるがままに悶えて、喘いで、トロトロと溶けていった。
「…い、…おい、八神、起きろ!」
「んン…、…おはよう、蹴人…」
「おはようじゃない!なんで俺がココに居るんだ!しかも裸で!!このドロドロ具合にしろ、腰の鈍さにしろ、喉の痛さにしろ、腹の苦しさにしろ!どういう事か説明しろ!!」
「…そう大声を出さないで、蹴人。寝起きには辛いよ…」
翌朝、蹴人は昨日の事が嘘のように普段と変わらない蹴人に戻っていた。
俺は、昨夜起こった事の全てを蹴人に話した。
「わ、忘れろ!それは俺じゃない!断じて俺じゃない!」
「そう照れる必要はないよ。とても可愛らしかったのだからね。しかし、俺は今の君の方が君らしくて素敵だと思うよ。」
俺は蹴人を抱きしめて腕の中に収めた。
「素敵って…バカか、お前は!相変わらず小っ恥ずかしい奴だ…」
そう言って蹴人は呆れたように溜息をついた。
後日、酔ってしまった時の蹴人の様子を新見君に聞いたところ、蹴人はワインに弱いのだという事が分かった。
新見君が目を離している間にワインを口にしてしまったそうだ。
ワインを口にした時の蹴人は普段隠している気持ちを素直に口にするのだと新見君は言った。
つまりは、昨夜の出来事は酔った事によるものではないという事になる。
そして俺は、昨夜の出来事は俺の宝物として胸に仕舞っておく事にした。
- end -
総一郎さんへのご褒美回です。
たまにはね、たまには。
みつき。
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