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第69話.ライバル?!
授業の準備があるからか、ハルがいなくなると静は変な緊張から解き放たれた。
さっき初めて会ったはずなのに、あれ程敵意を向けられる理由が分からなかった。
授業と授業の間の休み時間に鈴成が静に会いに来た。
「本島くん、体はもう大丈夫? クマも消えたようで良かった」
「鈴先生、あの時は本当にありがとうございました。お陰様でもう大丈夫です」
久し振りに見る鈴成の笑顔が静には眩しかった。
「あと、寮の部屋なんだけど、内装をかなり変えて今週末には出来上がる予定になってる。来週からは寮に戻ってもらうことになると思うから」
「わかりました。明さ……」
「地迫先生、少しいいですか?」
話に割り込んできたのはハルだった。
「え? 諸角?」
「僕はもう大丈夫です。明さんと拓海さんには僕から伝えます」
「分かった。よろしくな。で、どうした?」
鈴成はごめんとジェスチャーだけするとハルが持っているノートを覗き込む。
鈴成とハルが一緒にいるとお似合いのカップルの様で、静はただ眺めるしか出来なかった。
2人が離れて行く際にハルが勝ち誇ったように笑うのを静は見た。
そうか、あの人は鈴先生のことが好きなんだ。
静でなくても、あれ程あからさまな態度を示していれば、誰でも気がつくだろう。
寮の部屋に戻った初日、また勉強のために3人で集まった。
「静、中間まであまり時間ないけどまたよろしくな!」
「特にハル先生が担当のところがどうも分からなくて」
誠の『ハル先生』発言に静はビクッとする。
「静?」
「とりあえず、わからないところから始めようか」
「待って。その前に聞きたいことがあるんじゃない?」
敦は静の異変に気がつく。
「……諸角先生ってどんな人なの?」
「ハル先生? うちの学校の卒業生で、3年の時に鈴先生が副担任の先生だったんだって」
誠が答える。
「噂だけど、学生の時に何度も鈴先生に告白してるらしい」
敦の言葉に静はやっぱりと思った。
「たぶん、今でも好きなんだと思う」
「あぁ、それはオレも思った。何だかんだでずっと鈴先生にくっついてるもんね」
鈴成とハルが一緒にいるところを思い出すと、静の心はモヤモヤとする。
それが何なのかわからなくて静は溜め息をつくことしか出来なかった。
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