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第71話.目撃
学校で着る事は無いかもしれないと思っていた体操服の上にジャージを着て、グラウンドに行くとそこにはもうハルがいた。
いつもならグラウンドは部活動で使われているのに今日は誰もいなかった。
おそらく、そんな日を狙ってハルは静に声をかけたのだろう。
「逃げなかったんだ」
逃げたところでまた何か言ってくるのは分かり切っている。
嫌な事は早く終わらせたかった。
「取り敢えず、準備体操したら?」
「はい」
思いっきり走るのは事故以来初めてだ。
静は緊張していた。それだけに準備体操は念入りに行う。
ラグビー部は対外試合の為に着替えだけを済ませると、試合会場に向かう。
潤一は何となくグラウンドに目を向けると、ジャージを着て準備体操をしている子がいて不思議に思った。
その場にいるのはその子と教育実習生のハルだけということも引っかかった。
誰だ?
体を捻るような運動で顔が見えた。
「本島!?」
体育の授業を1度も参加したことがない静がジャージ姿でいるのはおかしい。
潤一はスマホを取り出すと敦に電話をする。
敦はツーコール目で出た。
『潤一? どうした?』
「なぁ、本島がジャージ着てグラウンドにいるんだが、何か知ってるか?」
『え!? 誰か一緒にいるの?』
「諸角先生がいる」
敦が驚いているという事は、予期せぬ事態なのだろう。
『潤一、止めて』
「おい、長谷! 何してる? 遅れるぞ」
「すみません、すぐ行きます。ごめん、敦。これから試合に行かなくちゃならなくて」
本当なら、潤一だって静のことを助けたいと思っている。
『そっか。そうだったよね。大丈夫。拓海さんにも連絡するし。ありがとう教えてくれて』
潤一が何かいう前に電話は切れた。
今頃拓海に連絡がいっているのだろう。
敦の声の様子からして、走ってグラウンドに向かっていると思われる。
潤一は静に何事もない事を祈りつつその場を後にした。
敦は潤一の電話を切った後にすぐに拓海に電話をした。
『敦くん?』
「拓海、さん! 静が!」
走りながらだから上手く喋れない。
『落ち着いて』
「グラウンドに、向かって! 静が、危ない!」
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