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ユウと椎名ーユウー

**** 赤いひものふわふわ それがなんなのか言われたけれど覚えられなかった だけど「あげる」って...触っていいってことだと思ったからギュってしてみたら怒られなかった ユウと一緒ってなんだろう.... 赤いひもがついていたから......これもユウっていうのかなぁ もう一個、違う形のふわふわを見せてもらった 彼は「とり」だって言ったけど、とりはあんな形じゃなかった.... でも彼がそういうなら間違ってしまったのは自分だと思う 触ってみたかったけれど高いところにいっちゃった あれはどれくらいふわふわしているのかな あれは触ったら動くのかな あれは舐めてもいいのかな 彼はなんでも届かないところに置いてしまうから 見えているのに届かなくてだから余計ほしくなる ......あれはいつだったっけ すごくおいしくて甘くてサクサクしてた それは箱に入っていて...プリンじゃなくてもっと違うやつ その時、すごく怒られたあとで.....えっと...なんで怒られてたのかは忘れてしまった ずっと何も食べさせてもらえなくて...ずっとずっとお腹がすいてた だからそれがすごくおいしくていっぱい口に入れてもらった その後、彼の指も甘くて、それもいっぱい舐めて、齧ってしまったら殴られた もっと欲しかったけど、その箱は届かない高いところに彼が置いた その日はベットで一緒に寝させてもらえる日で、とってもうれしかった ふと目が覚めたとき、彼はまだ寝ていて、腕の中から部屋を見渡していたら、高いところの箱に気付いた 思い出すと、急に食べたくなって...いてもたってもいられなかった そっとベットから降りて置いてあるところまで近づいた それは食器棚の上の方......手を伸ばしてみたけど届くはずもなかった 背伸びしたりしたけど全然だめで、よろけた拍子に棚が揺れると少しだけ、箱が動いた気がした 押してみるとガタガタしながら箱が動いて、最後は自分の頭にぶつかって床に落ちてきた 中身が全部床に散らばってしまったけれど、それを両手いっぱい掴んで口に放り込んだ 夢中で頬張っていたから全然気づかなかった もうずっと彼が起きてこの一連の自分の行動を見ていたこと 「何してんの?」 って言われた時は、もうほとんど食べ終わってしまっていた 見上げた彼の顔は笑っていたような気がするけれど... その後はどうしたんだっけ 思いだせない...... でもそれからその箱も甘いのも一度も見てはいない 二度と彼がそれをくれることはなかった それからは勝手にベットから降りることも、自分でなにか取ることもしてはダメだと知った いいよって言われたら怒られなくて、彼が口に運んでくれたものは食べてもいいものだと教えてもらった だけどそれでいいんだと思う 彼はいつも正しくて自分はいつも間違える そばに置いてくれるならそれでいい なにももらえなくてもそれでいい

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