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共同生活
「お腹すいたよね?昨日もたべてないんだから」
椎名はユウの手を引いて、部屋を出る
窓から離れたがらなかったけれど、強めに引いてその部屋を後にした
あの部屋はだめだ
気分が悪くなる
引きずるようにして扉を閉めるとユウは少しおどおどした目で見上げてくる
「なんか食べよう?」
"ユウは俺があげないと食べないよ"
彼の言葉が頭に浮かんだけれど、とりあえずキッチンまで手をつないで連れて行った
ユウの手は小さくて冷たい
引いて歩くと細くて軽い体なのがよく分かった
「なんか君が食べてくれるものがあるといーんだけど」
冷蔵庫を開けると、中はキチンと食材が揃っていた
ドアポケットには見たこともない数の調味料も揃えてある
頻繁に買い物に行かなくても済むように大量に買い揃えてあるのかもしれない
真中の棚にプリンが数個置かれている
ユウのためにプリンを買ってきたっていっていたっけ、、、
「ね?プリンなら食べてくれる?」
1つ取って振り返ると、ユウはぼんやり上を見上げていた
「なに?」
目線の先を追うと、高い棚の上に置かれたとりのぬいぐるみをじっと見つめている
「あ、、そうだよね?欲しいよね。とってあげようか?」
ユウはじーっと見つめるだけで答えない
椎名はユウの肩に手を出し置いて自分のほうを向かせた
「ねぇ、これ食べたらあのとりさんと遊ぼうか?」
ユウは首を傾げる仕草を見せる
「うーんっと。分かる?とりあえずこれ食べよう?」
キッチンの戸棚を手当たりしだいに開けてスプーンを探した
気をぬくとペタンと床に座るユウを抱えてイスに座らせた
プリンの蓋を開けてあげるとユウのお腹がまたキュルキュル鳴る
「お腹すいたね。」
スプーンを握らせてみる
自分で食べることはできるのだろうか、、、
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