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第3話
「あ?学外の奴等と揉めておまえが怪我したのはオレにも原因があったからな。こいつが躍起になっておまえの仇とったんだ、代替わりの理由には十分だろ。それにトップ張ってたのはおまえのためだったからな。もう必要ないだろ」
…最後のところが本音だな。
オレが不良に因縁つけられたとき、じつはちかくんに散々貪られた後で足腰ガッタガタだった。足一本やられたけど、それでも相手は全員沈めたのだ。
だから、あいつがその不良グループを潰したって聞いたときはびっくりした。普段から調子にのっていたと聞いていたが、まさかオレのためだったとは。初耳。
オレはそのとき動かせない足をいいことに、ちかくんに甲斐甲斐しくお世話されてた。上も下も。
「あまりにもこいつに入れ込みすぎて、そのせいで恋人と別れたんだよな。あーでも当然の結果か。あの女男と付き合ってたのも、はじめて男好きになって悩んでたんだもんな?女みたいな男で練習しようとしたんだろ?」
「ぐ…っ」
にやにや笑うちかくんに、奥歯を噛み締めるあいつ。
「そこの一年だってあれだろ、バカなとこがこいつに似ててかわいく思えちまったんだろ。おまえにはちょうどお似合いだよ」
「うるせえ黙れよ!」
「はは、図星かよ」
うわ、ちかくん性格悪い。
もはやちかくんに遊ばれてるあいつがかわいそうになる。
「うちの頭いじめるのやめてよ、ちかくん」
それにしても…
「そうか、女の子みたいなのが好みだと思ってたけど、ちがったんだ。そうだよね、子犬くんちょっとオレに似てるなって思ってた。性格とか体格とか…」
「う…っ」
…あれ?
男同士に悩んで、女みたいな男の子と付き合って、オレが理由で別れて、オレに似た後輩を可愛がって…?
あれ、もしかして、オレ結構好かれてる?
「好かれてるどころかメロメロだろ」
ちかくんの言葉にあいつを見れば、真っ赤な顔で睨まれた。
「っ、そう言うお前らはなんなんだよ!」
思わずちかくんと顔を見合わせる。
ちかくん?ちかくんは昔馴染みでご近所さんなのだ。いわゆる悪い先輩ってやつで、中学のときからいっしょにやんちゃしてた。
むかしから不良だったけど、頭はいいし、イケメンだからすごいモテる。学園一になるくらいだからもちろんケンカも強い。
いまはアッシュグレーとかいう銀っぽい髪色だけど、染める前はさらつやの黒髪で……あれ?
「やっと気付いたか?おまえはこいつに昔のオレの面影を見てたに過ぎないんだよ」
ちかくんに指摘されて、改めて二人を見比べてみる。
顔はまったく似てないけれど、言われてみれば近いような気がする。黒髪とか。
「~~っ、似てるならオレでいいだろ!オレに惚れてるんだろ?」
あいつの言葉にはっとする。
気づけばオレはちかくんだけを見つめていた。
「それは無理だろ」
鼻で笑うちかくん。
そうかな。たしかにちかくんは昔からずっと側にいるけど…。
「あいつが他にうつつをぬかしても、なんだかんだ文句言いながら平気でいられたのはオレがいたからだろうが」
「そ、そんなことは…」
「ないって言えるか?想像してみろよ、例えば、そうだな、オレがそこの後輩と付き合っておまえにかまってやらなくなったら…」
「やだ!!!」
ちかくんが子犬くんを指差してそんなことを言った刹那、ざざざと全身を駆け巡った嫌悪感。
きっ!と子犬くんを睨み付けて、ちかくんを取られないよう強くしがみついた。
「ほらな?だから言っただろう」
唖然とするあいつと子犬くん。
想像できてしまった。
あいつが前の恋人や子犬くんといっしょにいたときは、そりゃ少し淋しかったけどちかくんがいたから平気だった。でもちかくんがいなかったら、かまってほしくて泣いて泣いて、自分の涙で溺れるところまで想像できてしまった。
「昔からそうなんだよ。オレに女ができたりしてすこしでも放っとくと泣いて怒るんだ」
そうだったっけ?と首を傾げるが、ちかくんは満足そうに笑うだけ。
「忘れてるのも無理ねぇな。オレがおまえを放っとくことなんてねえし。そのくせおまえ自身は好き勝手にふらふらしてなぁ?」
言葉は荒いがちかくんは笑っている。
「おまえははじめからオレのものなんだよ」
ちかくんがいないと困るのは自分でも理解したけど、それには素直に頷けない。
「ちがうよ」
「あぁ?」
「ちかくんがオレのなんだもんね!」
にっと笑って宣言してやれば、なんでか興奮したちかくんに押し倒されてベロチューかまされた。そのまま本気で服を脱がされそうになり、決死の思いでみんなが止めてくれた。
結局はちかくんの縄張りに連れ込まれて好き勝手されるのだけど。
「ねえねえ、ちかくんはオレのこと好きなの?」
「愛してるな」
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