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愛撫 2
朝、テーブルの上のチョコレートはすべてなくなっていた。
まさか、武将が食べてしまったのだろうか。そうだとしたら大変だ。
「おい、石井」
そう思えば石井と武将の姿がない。
「やっぱり武将か。病院に行ったんだな」
サイドテーブルに置きっぱなしのスマートフォンを取りに向かい、石井へと連絡を入れる。
すると玄関の方から着信音が聞こえてそちらへと向かうと、尻尾を振りながら武将が出迎えてくれる。
「石井、武将……」
なんともなさそうな姿をみて安堵する。
「朝ご飯を買いに。あ、もしかして帰ったと思ったんですか?」
ニヤニヤとしている石井をみて、こんな時ばかり表情を素直にだしているのがむかついて八つ当たりとばかりに頭を叩く。
「チョコレートが食ってあったから、武将が食べたのかと思ったんだよ」
「あぁ、あれは俺です」
あっけらかんとした表情で言われた。
「え、甘い物、平気なの」
「はい。かなり好きな方です」
いつも菓子を食べないからてっきり苦手なのだと思っていた。
「貴方が好きな男からのですよ? むかつく」
ただのやきもち。
「なんだよぉ、本気で心配した」
「すみません。貴方に触れられて、しかも一緒に朝を迎えられて嬉しかったのに、アレをみたら腹が立って」
なんて可愛い理由なのだろうか。力が抜けてその場にしゃがみ込む。
「馬鹿野郎、メモ位おいておけよ」
「はい。次はそうします」
片膝をつき肩に腕を回して抱きしめられキスをされる。
それを受け入れて、唇が離れる。
「今度、買って返せよ」
「わかりました。その時は一緒に買いに行きましょうね」
「武将もな」
武将の頭を撫でると、ワンワンと吠える。まるで嬉しいといっているかのようで、その身を抱き上げて頭と頭をくっつけてぐりぐりさせれば、
「俺も混ぜてください」
と顔を寄せてきて、一人と一匹を包むように抱きしめながら、暫くの間、この暖かな雰囲気に包まれていた。
<了>
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