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Ⅰ こんな出逢いはアリですか?①
幾ら抵抗しようにも
幾ら拒絶しようとも
運命は俺の意思を無視して、走り寄ってきた。
「すみません!」
「うわーっ」
本日、2回目の絶叫
だって、だって、俺っ!
水も滴るいい男に抱きしめられてる★
「ウふ、フフふゥ~」
「どうしましたかっ」
「ふるしぃ~」
「古新聞」
ちゃうわっ!
なんで廃品回収せなならんっ。
「くるしい~」
「あっ」
俺の顔を押しつける胸が離れた。
無理矢理な腕から解放されて、ほっとする……筈なのに
焦燥感を覚えたのは、なぜ?
彼の背後でホースが草むらの蛇みたいに地面をのたうっている。
ジュワジュワ……
ホースの口から溢れた水が、地面をベチョベチョに濡らしていた。
前髪から雫が伝っている。
慌てて手を離したんだろう。
ホースの水をかぶって走ってきてくれたんだ。
黒髪にとまった水滴は、夕映え色を垂らした朱に染まっていた。
蝉の声に混じって吹いた風
長い睫毛が揺れる。
あれ?
なんだろう?
俺は以前にも……
「タオル持ってきますね」
「あ、はい」
夏場に濡れた服なんて、すぐに乾くのに。
タオル断るタイミング、失っちゃったな……
真っ白なタオル片手に玄関から彼が走ってくる。
「わーっ」
本日、3回目の絶叫~
だって、だって。
大きめのタオルを頭に被せるやいなや、両手でワシャワシャ掻き回すものだから!
「俺は犬かーっ」
「犬というよりも、猫ですね。サイズ的に」
やかましいわっ
大柄って訳じゃないけど。
小柄っ程じゃない。
中くらいだ。
ごくごく何処にでもいる高校生だからな、俺。
「……立場、逆転しましたね」
「ん?なんか言った?」
タオルでワシャワシャされて、よく聞こえない。
ようやくタオルから手が外されて、俺を見下ろしていたのは、漆黒に赤い火を灯した夕闇色の双玉だった。
「……濡れてるよ」
不思議な色の瞳に手を伸ばす。
夕陽を閉じ込めた玲瓏に
頬の水を指先で弾いて、タオルの端っこの濡れていない所で黒髪の雫を拭いた。
「ありがとう」
もっと触れていたい。
彼の髪に……
「わぁッ」
不意に、ぎゅうっと手首を掴まれた。
右手からタオルが離れて、髪からすとんと俺の首に落ちる。
失礼だった。
初対面なのに、ずっと髪の毛触って。
「あのっ」
手を離してくれない。
「あのっ!」
大きな声を出したけど、やっぱり離してくれない。
それどころか。
「わぁーッ」
もう何回目の絶叫でもいいや。
俺の体、引きずられてく。手を離してくれないから。ずんずん~
「わわわッ」
どこに連れてかれるんだーッ
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