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第1話
手を伸ばし、部屋に入る前に買ったペットボトルを手にした。買った時に冷たかったそれは、既に生温い。
「……ぅ、ま、まさよ、し…、もうやだ……ぁっ」
てっきり意識を手放していたと思った。うつ伏せになる歳上の恋人は震える指でベッドのシーツを掴んでいる。
正義(まさよし)は温度のない液体を口に含み、後ろから彼の顎を掴んだ。
強引に振り向かせ口移しで飲ませようとしたが、無理な態勢だったせいで重なる唇の隙間から零れてしまう。
「ちゃんと飲んで。今トんでたでしょう」
「……トばせた、んだろ……っ、」
掠れたその声は苛立ちを示してきた。いつもなら繋がりを深くすれば強がりも潜め素直になるのに、今日はまだ正義を睨んでいる。
歳上だからと背伸びをする彼も好きだ。だが、今はそれを流してやれなかった。
正義は聡太(そうた)に重ねるようにして挿入していた腰を、上から圧力をかけるように押し付けた。
「ひ、っ、」
「……ッ、好きでしょう?…聡太さんのお尻は素直ですよ」
奥に、さらに奥を犯してやりたい。彼を抱いた男達の誰も挿り込んだことのない熱い粘膜へと。
「や、やぁ、だっ、」
腹の底で燻る感情を吐き出せば、だから歳下は嫌なんだと呆れた声で言われてしまうだろう。
自分より歳上の男しか相手しない彼を手に入れるまで、何度も悔しい思いをした。やっと手に入れた彼に呆れられるのも、嫌われるのもゴメンだ。
「……大体…、あなたが悪いんです。同僚だからって……っ、触らせすぎなんだ…!」
珍しく彼から誘われて繰り出したその先は、絶対に行きたくないと言い切っていた花火大会の会場だった。
夏の終わりに行われる大きな花火大会。夜空に打ち上げられる大輪の美しいその花火を楽しもうと、毎年大勢の人々が蒸し暑い夏の夜に集まるのだ。
暑い、面倒だと言っていたのに誘ってくれたこと自体は素直に嬉しかった。
なのに、人混みの中で偶然出くわした彼の同僚だと言う男に、肩や髪を触らせていた。
「んなの、し、知らな、」
「…いつも言ってますよね、俺……。危機感が薄すぎるって…」
20代後半には見えないその幼い顔立ちと、綿菓子のような柔らかな癖毛。大きな瞳は笑うと優しく細められ愛らしく、スーツを脱げば華奢で淫らな肌が現れる。
強気な口調とは裏腹に寂しがり屋。酔うとすぐに甘えるその指先も、もっととねだる唇はいやらしく濡れるのも魅力的だ。
「……や、やだ、」
「嫌じゃないですよね?」
彼の身体の下に手を入れ、萎えていない事を確認しようとしたが、その手首は細い指に掴まれた。
「…これヤダって言ってんだよ、ま、前からしろよ……」
度々訪れるお仕置きのようなセックスで、彼は後ろからされる事を嫌がる。
それが分かっていて強引に後ろから挿入していたのだが。
「聡太さん、俺が何に怒ってるのかちゃんと理解してます?」
彼はコクコクと頷いた後、正義の身体のしたで向きを変えようとし始めた。
彼の中からずるりとペニスが抜けてしまったが、仰向けになった聡太が自ら足を広げて抜けてしまったその場所を見せつけてきた。
「……も、気をつけるから…っ、正義…、」
白い肌に浮かぶ汗が卑猥に見えるのは何故だろう。
いやらしく誘われたからと言って簡単に流されるのは悔しいのに、その淫靡さを見せられてしまうと抗うことは出来ない。
正義のペニスは再び熱い粘膜に包まれ、求められるまま彼と深く口付けた。
「ん、んん、っ、」
下から伸ばされた手は正義の首に回され、開いていた足は高くあげられている。
器用に下から腰を揺らしている彼の淫らな動きに、頭がかっと熱をあげた。
「あっ、あ、い、いい、正義ぃ、そこ、もっと、もっと……っ、」
リズミカルに突き上げる正義の腰を、褒めるように彼の手が撫でてくる。
(……結局これだ)
最後には彼の熱に全て溶かされて流されてしまう。
正義は激しく彼の白い身体を揺さぶりながら、甘い悔しさを味わった。
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