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【SS】お味はいかが

「いてっ」 アヤが小さく声を上げた。仕事の後リョウと落ち合い、夕飯がまだのアヤだけが忙しなくカップ麺を啜っていた時のこと。 「どしたん」 それまで見ていたテレビから意識を離し、リョウが近寄る。 「なんでもない、ちょっと口の中噛んだだけ」 「んもう、そんな急がんでも、ゆっくり食べたらええねんで」 眉を八の字に下げて口を尖らせ、アヤの頬をさすると、急にアヤの顔が歪んだ。 「あら、撫でたらあかんかった?」 「血の味」 心底嫌そうな顔で言い捨てた。噛んだところから出血して、その味が嫌だということらしい。 「どれどれ見してみ」 リョウはアヤの下唇をべろんとめくった。なるほど、赤くクレーターのように丸く凹んだ部分から血が出ていた。 唐突にリョウが患部を口で覆い、吸い上げた。 「んんっ!?」 驚いたのはアヤ。目を白黒させるもどんどん体重をかけられ、肘をつかないと支えられなくなり、ついには床に押し倒される形となった。その間もリョウの唇はアヤの傷口に吸い付いたままで、時折舌で舐め上げてくる。熱くてぬめぬめとした感触は、食事中だという今の状況を忘れさせ、意識を連れていこうとする。 リョウの身体に巻つけようとつい腕を伸ばしかけた時、唇が解放された。その途端、アヤの眉間に皺がよる。 「何やってるの」 「血の味嫌って言うから。もうそんなに味せえへんやろ?」 舌をぺろりと仕舞いながらリョウは笑顔で答える。 「ていうか、人のなんて嫌じゃないの?匂いとか、味とか、雑菌とか、汚いし」 言いながら起き上がろうとしたアヤを、リョウが押し留めた。そしてもう一度、傷口にむしゃぶりついた。ひとしきり口の中に舌を這わせると 「もっと汚くて匂いキツいのでこん中いっぱいにするくせに」 ニヤリとして言い放った。早くも完全にやる気の目だ。 「…やっらし…」 耳を赤くしたアヤが思わず口を押さえて呟くと 「アヤにだけは言われたないわ」 今度は唇まるごと塞がれて、眼鏡もリョウの手によってどこかへやられてしまった。

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