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キスの日
じゃれた仔犬のようにぶつかって来る唇は、よく知るいつものやわらかさ。
無邪気に口を尖らせてくっついてきたかと思えば、壊れ物を扱うように優しく触れ、溶けるような眼差しは慈しみに溢れていて。
降ってきた唇をほとんど表情ひとつ変えず受け止め、むしろ鬱陶しそうにすら見えていたのに、次第に眉間の縦皺は消え、僅かに目を細め、両の口端がほんの少しだけ上がる。
もう離すまいと、両腕でがっちりと愛しい温もりを捉まえる。
『やっと、会えたね』
愛しい者を映し合う、目と目で交わす、いつもの言葉。
「久しぶり」
唇が離れたあとの、いつもの言葉。
こうしてくちびるを重ねられる、同じ時を共に過ごせる喜びを、誰にか分からないが感謝せずにいられない。
何度も何度もしたって、彼らのキスは、いつだって新鮮だ。
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