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離れていても
恋をしたらまっしぐら、他のことは何も考えられない。恋愛第一、恋人第一。寝ても覚めても相手のことを考え、できることなら四六時中密着していたい。
そんな男が、無謀にも遠距離交際に挑んだ。
男をよく知る仲間からは、呆れられ、絶対に長くは続かないと鼻で笑われもした。当の本人だって全く自信がなかった。せめて毎日電話ぐらい、と思ったら、相手はなんということか電話すら億劫な連絡不精だった。
会えない日々が続くと、相手の気持ちも、はたまた自分の気持ちにさえ自信が持てなくなって、駄々をこねたこともあった。そのたびに、穏やかに宥められ、また惚れ直し、の繰り返し。
今ではすっかりこのサイクルに慣れてしまった。
絶対に続かないと言われた二人は、二度目の夏を共に過ごし、二度目の秋を迎えようとしている。二度目の冬、二度目の春も超えて、三度目、四度目、その次もずっと……それが今、一番の願い。
会えない時間が愛を育てる、なんて昔のヒット曲で歌っていたっけ。皮肉なことに、歴代交際歴最長記録を更新している。実はこういう付き合い方の方が性に合っているのかもしれない。
――いや、違う。
離れていても、想い合えること。
今となりにいる、めんどくさがりで出不精で連絡もろくに寄越してこない、この憎たらしい男が教えてくれたからに他ならない。
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