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…キレーだな~。 ファーストクラスにある客席。そこでお花見ならぬお空見をして現実逃避している青年、シェヘラザードは女々しい内面とは対称的な美貌の持ち主。 「ああ早くホストの可愛い子ちゃん達と会って・・グフフフフフフフッ」 その時その顔にある鼻の下を伸ばし自分の美貌を台無しにしたゲイ、シェヘラザードは十数年前、中東にある王制の国に生まれた。 「おめでとうございます」 王宮の中。そこで助産師に取り上げられたシェヘラザードは産声を上げ始めた。 「ああ可愛いシェヘラザードあなたの名前はシェヘラザードよ」王妃と王の間に生まれたシェヘラザードは王位継承権を持って生まれた為、数年後、王に国を治める事の大変さを教えられた。 「へー」 その時、自分が王位継承権を持っている事を知らなかったシェヘラザードは後日、自分が王位継承権を持っている事を知りその目を見開いた。 「エ…」 その時、強いプレッシャーに幼心を押し潰されたシェヘラザードは事ある事に現実逃避する少年になり数年後、自分が抱く側のゲイだという事に気付いた。 「…やっぱ俺って抱く側のゲイだったのか…」 あられもない恰好の美青年が含み笑いをしている画像。シェヘラザードのスマホやベッドがある室内。そこで自分が抱く側のゲイかどうか確かめる為、抱く側のゲイの人向の為に作られたエロサイトを探し見たシェヘラザードは自分が抱く側のゲイだと言う事を確信した。 それから両親などの目を盗んでコールボーイを呼び大人の階段を登ったシェヘラザードは後日、日本に自分好みの美青年ホストがいる事を知った。 「イッ行きてぇーっっ」 男性も入店可能…という文言や美青年ホストの画像が表示されているモニター。少し前、教育係に教わった日本語でホストクラブのサイトに書いてある言葉を読んだシェヘラザードは考え事をする素振りをし始めた。 どうやって心配性の親父達を説得しよう…。 後日、シェヘラザードは神妙な面もちでシェヘラザードの両親がいる室内にいた。 「何だ?かしこまって」 「親父…いや父上、俺将来、国を衰退させたりしない立派な王になりたいんだ…」 それから心にもない事を口にし母親を感涙させると共に日本に行く為に必要な物を得たシェヘラザードは後日、空港にいた。 「護衛なんて連れて歩いたら俺が要人だって言って歩くようなもんだよっ」 シェヘラザードとその母親、護衛の男がいる空港。そこで護衛を連れて行かせようとした母親に笑顔でそう言い一人で出国したシェヘラザードは後日、「ヤベッ」と言いその顔をこわばらせた。 数日前、日本にあるホテルにチェックインしたシェヘラザードはホテルとホストクラブを往復する生活をし始めた。 同じ頃、シェヘラザードの後を追って一人の男が来日した。 「…ここが日本か…」 シェヘラザードの母国語と同じ言葉。地味な服の上からでも判る引き締まった体。ただ者ではないオーラをまとっているその男は後日シェヘラザードが滞在しているホテルに現れた。 シェヘラザードやシェヘラザードの後を追って来日した男、ホテルの従業員がいるロビー。 そこでそれとなくシェヘラザードの姿を見ている男の姿を見た清掃員、シュウ・コウメイがその首を傾げた。 …変な客…。 儚げで若々しい。シュウの美貌…と言っても過言ではない顔は可憐で体格は華奢。小柄でラフな格好をしているシュウは天涯孤独の美青年で数年前、父親と共に来日した台湾人。女々しい外見とは裏腹な性格の持ち主で頑張り屋のシュウは頑張り過ぎて倒れる事が欠点のタフガイ。 …ま、いっか。 シュウは仕事を再開した。 その時、自分を追って来た男の存在に気付いていなかったシェヘラザードは後日、ホストクラブの近くにいた。 「…ちぇっ」 ホストをテイクアウトする事に失敗したシェヘラザードがふてくされた顔で歩いている繁華街。そこでシェヘラザードがホストクラブから出て来る所を目にしたシュウはその眉をひそめた。 …アイツ今日もホストクラブに…。 数日前からホストクラブから出て来るシェヘラザードやホテルにいるシェヘラザードの姿をたまたま見ていたシュウはシェヘラザードが遊んで暮らしているダメ男の典型だと思った。 それから職場で頑張り過ぎて倒れるまでシェヘラザードを軽蔑し続けたシュウは後日、シェヘラザードが使っている室内にいた。 「大丈夫か?シュウ」 シュウの仕事仲間とベッドにダウンしているシュウがいる室内。そこで少し前倒れたシュウは「悪い」と言いその身を起こそうとし始めた。 「あ、まだ寝てろよこの部屋の掃除はオレが…」 「何でコイツ俺のベッドで寝てんの?」 その時シュウの仕事仲間の言葉を流暢な日本語で遮ったシェヘラザードは真顔でシュウを一瞥した。 シュウの仕事仲間は慌てふためいた様子でその口を開いた。 「もっもうしわけございません。コイツ頑張り屋で時々頑張り過ぎて倒れちゃうんで…」 「いいよ。これからシャワー浴びるし、シャワーの後はホストクラブ行くから」 !!。 その時、シェヘラザードに他のホテルに移ると言われるんじゃないかと思っていたシュウはその目を見開いた。 アイツ思ってたよりイイ奴なんだな…。 シュウは少しだけシェヘラザードに対する評価を変えた。 それから仕事仲間が持って来た栄養ドリンクやビタミン剤を飲み元気を取り戻したシュウは後日、職場にいた。 …今日も隅から隅まで綺麗にするぞっ。 清掃員が身に着ける制服姿でモップを片手にしている。平凡なホテルのロビー…と言うと大半の人が連想するであろう空間。そこで意気揚々と床掃除をし始めたシュウはほどなくしてランナーズハイならぬクリーニングハイになった。 …もっと綺麗に…もっともっと綺麗にしてやる…。 シュウがその目を血走らせ始めた直後、掃除に集中するあまりシェヘラザードの接近に気付かなかったシュウがシェヘラザードにぶつかった。 「!?!あっもっ申し訳ございません」 その時、シュウの顔を一瞥しその口を開いたシェヘラザードは「いいよ痛くなかったし」と言いその場を去り始めた。 …何かアイツ、いつも元気ないな…。 シュウはシェヘラザードの広いのに狭く見える後ろ姿に恋心を抱いた。 ?。 その時、宿泊客が誤ってワインボトルを落としシュウは生まれて初めて抱いた感情が何なのか?理解する間もなく仕事を再開する事になった。 「大丈夫ですか?」 シュウは誤ってワインを落とした人にそう言いながらシェヘラザードに視線を移した。 …何でオレあいつを…。 「すみませ~ん」 ワインを誤って落とした人はそう言いシュウの思考を遮った。 「大丈夫ですよ多分…」 それからワインで汚れた床そうじを暫くの間し続けたシュウは後日、ホストクラブの前でホストとつかの間の別れを惜しんでいるシェヘラザードの姿を目にした。 「ハニーハニーと11時間も会えなくなるなんて淋しくて淋しくて僕しんじゃうかも…」 その時、シェヘラザードに対して死ねっと思ったシュウは刹那、我に返った。 なんでオレ苛ついて…。シュウが考え事をし始めた直後「シュウ」と言うシュウの同僚の声がシュウの鼓膜を揺らした。

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