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第1話
幸せだと思っていた。
「みやび?」
そう言って優しく笑い僕の元に駆け寄ってくれるのが。
ぎゅっと抱きしめてくれるのが
優しく口付けてくれるのが…
先輩と後輩。友達同士からの関係から『恋人』という関係になるのが…
それなのに今は…
「なぁ、みやび…俺はお前にこんな酷い事はしたくないんだ…」
それが幸せだと思っていたことがとてつもなく怖い。彼が近寄ってくる度に、不安と恐怖に支配され全身が震え上がる。
「震えてる…
ねぇ、俺が怖い?雅も俺を認めてくれないの?」
笑いながら、彼は近づいてくる。雅は他の奴とは違うよね?雅は俺を見てくれるよね?そんなことを呟きながら僕の元に近づいてくる。
「せ…んぱっ」
怖くて全く出せないその叫びも聞き入れてはくれない。ついに僕の目の前に彼が来て唇と唇を重ねようとする…
「っ…」
だけど僕はそれを無意識に拒否してしまった。すると、彼の顔色が変わった。なにかに怯えていたものが怒り、悲しみ、憎しみのような表情に飲まれる。
「なんで、なんでなんでなんで何で!拒否するんだよ…お前も俺を捨てるのかっ!?あんたも俺を…」
そして、彼は無心になり僕をける殴る…そして、やがてそれは彼の近くにあったナイフを手に取り振り上げ…
「龍我先輩やめっ…!」
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「はっ…」
そこで僕、麻弥 雅は目を覚ました。嫌な夢を見た。起きた頃の僕は冷や汗で体はベトベトになっており、無意識に涙が溢れ出ていた。
「シャワー浴びよう…」
そうして服を脱ぎ風呂場にある鏡を見るとそこには無数の赤い斑点と生々しい傷跡。
「汚いっ…」
僕は我を忘れて暑いシャワーを浴びて広がる反転と傷跡を掻き毟る。
汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い
気がつくと僕の体にはまた、掻きむしりすぎで至るところに流れる赤い液体。もう、痛みは感じない。
すると、どこからかこちらに来る音が聞こえる。彼かもしれないっ…僕のみに再び訪れる恐怖感で押しつぶされそうになると僕のいる浴室に入ってくるひとりの人。
「雅っ!」
でも、それは僕の想像していた人とは違っていた。僕の姿を見て心配そうに声を荒らげてこちらに近寄ってくる彼。
「おはよう、優人」
僕は笑顔で彼に挨拶をすると優人は挨拶を返すまもなく僕を抱きしめた。
「何でまたこんなこと…」
そう、僕の体に流れているこれは今日が初めてのことではなかった。僕がこうなる度に優人は尽かさず僕のところに駆け寄る。
「僕ね、傷だらけになって汚いんだ…だから綺麗にしなきゃダメなんだよ…
僕は龍我先輩のことが好きだから。また会う時のために体を綺麗にしているの」
僕がそう言うとゆうとは悲しそうな顔をしていた。
「雅はいつもあんなことされて嫌じゃないのかよ…何でそこまで…」
「好きだからだよ」
「なぁ、俺なら雅を傷つけないっ!」
「僕は傷ついてなんかないよ」
しれっとした顔で僕は言うと浴室を出てし服を着る。
僕は傷ついてなんかいない。僕が龍我先輩のことを怖いと思ってしまうのは僕自身が弱いから僕のわがままだ。僕がちゃんと先輩を受け止めなきゃいけないんだ。
僕は、毎朝欠かさずに飲む錠剤を噛み砕いてその部屋をあとにした。
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