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とけるまえに、はやく
俺のお兄さんは変態だ。
でも、優しくて。俺にとても甘い。
いつも俺に向けてくる笑顔は甘い甘いとけてとろけるようなチョコレートのような人。
父親の連れ子だった俺と、現在の母親の連れ子だったお兄さん。血縁関係はないけれど、俺たちは仲が良い兄弟だ。
初めて会った時からしっとりとした口どけのいいチョコレートの微笑みを俺にくれた人。
俺の面倒を忙しい両親に代わって、イヤな顔せず、とてもよく見てくれて、出会ってからかなりの時間をずっと過ごしてきた人。だから俺は、お兄さんが結構変態でも、嫌いになれない。むしろ、好きだ。
変態でもお兄さんは勉強はもちろん、スポーツも出来て学生時代からモテていた。
しかし特定の誰かと付き合うということはなく、恐らく現在まで恋人と呼べる人は作っていない。
・・・・まあ、なんというか、変態なので・・・仕方ないかもしれない。
そして、一昨年、俺が東京の大学に合格し、就職が決まって先に実家を出ていたお兄さんと一緒に住む事になった。が、一緒に住んで分かったが、お兄さんは変態に『ド』が付くぐらいになっていた。
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今日はバレンタインデー。
俺は、人生初めてとなるチョコレートを女の子から貰い、かなりテンション上がり気味で、お兄さんとの待ち合わせの場所へと小踊りしながら向かった。
「おまたせ、おにい・・・って・・・・!(ココから小声)このド変態!」
「そんな罵られると、余計興奮するな・・・(ハアハア) 大丈夫だって。聡くんにしか見えてないし、見せる気な・・・・」
「(小声)もっと声のトーン下げろ~~~!(ちょー小声)そして早くしまえって!」
「はいはいはい・・・・」
お兄さんは、めちゃくちゃオシャレなカフェで某リンゴマークのPCを、できる男ってスーツをビシッと着こなして銀縁眼鏡が知性を醸し出しているのにも関わらず、眼鏡の奥の瞳は長い睫毛の愛らしい二重のぱっちりお目目・・・なのに、なのにぃいいい!!!
何故だか、お兄さんはお兄さんのムスコをコッソリ社会の窓からごきげんようさせて、俺を待っていたんだよ、このド変態は!!!
その上、俺に見られてると思って興奮して半勃ちだよ!!
「そういうことしてんだったら、もう外で待ち合わせとかしないからな!」
「ごめんごめん。許してよ? ね?」
ゴソゴソとムスコをしまいながら、口では反省の言葉を紡いだって、絶対反省などしてなさそうなお兄さん。でも、また甘ったるい、とけてとろけるような笑顔で俺に笑いかけながら謝る。そんな顔してて、誰かに襲われるんじゃないの?
・・・・まあ、このド変態お兄さんはある格闘技の有段者なので、そうそう襲う輩はいないだろう。たぶん、恐らく。
「聡くん、なにか飲み物頼んできなよ。ほら、お金」
「あ、うん。ありがと。ちなみにお兄さん、なに飲んでるの?」
「ホットチョコレート」
「ふーん。おれ、エスプレッソにしよ」
「・・・・いつもそうやって聞いてくるけど、いつもそれだよねぇ」
クスクスとおかしそうに笑うお兄さん。またまたどんどんとろけてしまう笑顔。正直可愛い。
可愛いが、お兄さんは男で大人で身長は俺よりも高い。
けど、結構華奢な体なんだよな。格闘技やってたから細マッチョって具合。俺はお兄さんより身長が5センチほど小さいが、もう少しガッチリしてる。
俺はお兄さんからお金を貰うと、レジで飲み物を頼みにいった。
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夜中になんだか下半身がムズムズして目が醒めた。
夢の中で、すっごくエロい夢見てた気がして・・・まさか!!
俺は飛び起きようとしたが、腰を誰かにガッチリと押さえられて顔を上げるのに精いっぱいだった。
「な、なにしてんだよーーーーー!!!!」
「ん?」
目が醒めると大変な事になっていた。
何故だか俺は、パジャマと下着を履いておらず、露わになっていたであろう俺のムスコを・・・スッポンポンのお兄さんが銜えていたんだよ、コンチクショー!
「なにやってんだよ、って! あんっ!」
「かわいい~! 聡くんの喘ぎ声~」
「ば、ばかーー!」
お兄さんは俺の弱いところを何故だか知って念入りに舐めてくる。おおおー、ヤバイ!!
「な、なんでそんなことしてんだよ~・・・」
俺はもう涙目だ。するとお兄さんは行為を一旦止めて、俺の上にゴソゴソと乗っかってきた。そして、驚く俺の顔を両手で挟みこみ、俺の顔をとろけるような甘い笑顔で覗いてきた。
「・・・聡くん、今日、女の子からチョコレート貰ったでしょ?」
「・・・・・え?」
なんで知ってんの?
「聡くんがお風呂に入ってる時に、カバン漁ったから」
「心の声を読むなー! で、な、なんで俺のカバン漁ってんだよ~!」
「だって、今日はバレンタインデーだから」
答えになってないんですけど、お兄さん。でも、お兄さんのとろける笑顔が・・・いつものように甘くなく、何故だかカカオ99%の苦さと黒さが漂っているのに気付いて、俺はそのまま固まった。
「同じ学校に通ってた時はさ、聡くんが手にする前にバレンタインのチョコは俺が全て握り潰してたんだけど・・・やっぱり生活違うとダメだね。どうしても隙が出来ちゃう」
あ~、俺が中高生時代に一度もバレンタインにチョコを貰えなかったのはそういうことでしたか~・・・・って、なんで!? なんでお兄さんが俺へのバレンタインのチョコを握りつぶすの!?
「俺は聡くんと出会ってからずーっと、それこそおはようからおやすみまで見つめて大事に大事にしてたのに・・・。どこの馬の骨だか分からない女が手作りしたとかのチョコレート、俺が聡くんに食べさせるワケがないでしょ?」
「・・・・・はい」
こわいー! マジ怖えぇ! ビター通り越してカカオ豆そのものー!!
「まあ、手作りじゃなくても握りつぶしてきたけどね」
「・・・・・えええ!」
「・・・聡くん、ホントにニブイよね。でもそんな所も好きだよ? でもさ、そろそろ、気付いて欲しいんだけど」
「へ?」
「聡くんのニブさは世界一だよね・・・だから童貞なんだろうけど」
「ニブイのと童貞は関係ないだろーーーー!!!」
「おバカさんだね。女の子がアプローチしてたって気が付かないくせして」
「・・・・・・・・マジ?」
「ほんと、鈍くて良かったよ・・・・でも、そろそろ、この状況は理解して欲しいけど」
この状況・・・・。俺は下半身スッポンポンで、ちんこ勃ってる。
そして、その上に・・・・スッポンポンのお兄さんが乗っかっている。お兄さんのちんこも勃ってる・・・・・・・・・・・・・・・・
「お、俺の貞操が!」
「ピンチだね、聡くん」
「ちょ、ちょっと待ってよ、お兄さん」
「あのね、聡くん。俺はずーっと聡くんが好きなんだよ。好きな人が傍にいて、我慢できないってぐらいは分かるでしょう?」
「・・・わ、わかる・・・・でも」
だって、俺達は血が繋がってなくても兄弟だ。こんな・・・こんなの・・・・
「聡くん、好きだよ」
俺の顔を両手で捕まえたまま、いつもとは違うとけてとろけるような、泣いてしまいそうな笑顔を見せるお兄さん。このままとけて消えてなくなっちゃうんじゃないかって、そんな笑顔。捕まえておかなきゃいけない、はやく。そう思ったら、お兄さんから目が離せなくなってしまった。
「好きだよ、聡くん」
お兄さんは、そう、消えそうな小さな声と、溶けてなくなってしまいそうな笑顔で、俺の唇に、そっと、甘い甘い溶けそうな、口付けをした。
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「聡くん、これ」
翌朝、腰を叩き叩きしながら朝の支度をしていた俺に、なぜだか下半身スッポンポンの肌艶ピカピカなお兄さんが白い布を渡してきた。変態のお兄さんなので下半身スッポンポンでも、俺はもう驚いたりしないのだ。
しかし、この布は?
「? なに? これ?」
「褌」
「・・・・褌」
「下着を褌に変えたいんだけど、まだ上手にできないから、聡くん、手伝って」
にっこりと、とけてとろけて消えない。
口どけは良いけど、もう消えない。
そんな笑顔で、褌巻いてくれっていうお兄さん。
なんでいきなり下着を褌に変えたいのかさっぱり分からない。
やっぱり変態なのかもしれないけど、俺はそんなお兄さんが好きです。
●FIN
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