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第2話

ボクの彼氏の名前は、鬼頭頼人。 彼との出会いはまさに運命的なものだった。 2か月ちょっと前。 和泉ちゃんたちと出掛けた夏祭りの帰り道、他の高校の不良グループに難癖を付けられ、絡まれていた僕らを助けてくれたのが彼だった。 ぶすっとしてて、一切笑わず、怖そうな彼に、何を勘違いしたのか、和泉ちゃんたち、ヤのつく人だよ、きっと。そうヒソヒソ話しをしてて、ありがとうございました‼と礼を述べてそそくさと彼の許を立ち去ろうとした。 でも、何故か、僕の足は、接着剤で地面にくっついたかのように全く動かなかった。 「ごめん、先に帰ってていいよ」 和泉ちゃんたちを巻き込む訳にはいかない。 「ユキがそう言うならーー」 心配そうに何度も振り返る和泉ちゃんたちを、精一杯の笑顔で見送った。 夜になってもなお、昼間の蒸し暑さを引き摺る、ムシムシとした生温い風が背中を吹き抜けていく。 たらりと、一筋の汗が額から溢れ落ち、ごくりと生唾を飲み込むと、喉にピリピリとした痛みが走った。 そんな僕に、彼は、優しい眼差しを向けてくれた。 「そんなに、怖がらなくてもいい、大丈夫だから。顔が怖いのは、もともとでーーごめんな、怖い思いをさせて」 急に、深々と頭を下げてきたから、面食らった。 あれ⁉ 何で、謝るの⁉ どうして⁉ 「俺の名前は、鬼頭頼人だ。ユキって、素敵な名前だね。君さえ良ければ付き合ってくれないか?」 「へ⁉」 「君に一目惚れしたんだ。他に理由はない」 事態を上手く飲み込めず、パニック寸前の僕に、彼は、しれっとして更に言葉を続けた。 出会って僅か5分あまり。 まさか、初対面の彼に告白されようとは・・・。 でも、待って‼ 僕、見た目男だよ。 どこにでもいるなんの取り柄もない、ごく普通の。容姿だって、十人並みだし。可愛くないし‼ 「悪いけど携帯、貸してくれるか?」 「携帯?」 「俺の番号を登録しておくから、気が変わったら電話をくれ。速攻で削除しても構わないが、俺が帰ってからにしてくれ」 「何でですか⁉」 「だってヘコむだろ・・・普通」 彼、耳まで真っ赤にしてた。 爪先立ちでその顔を覗き込むと、バツが悪そうに慌てて逸らした。 見た目、怖いけど、根は真面目で、優しいのかも。 彼を信じ、携帯を渡すと、片手で操作しすぐ戻してくれた。「じゃあ、待ってるから」そう言うと颯爽とこの場から立ち去った。 すぐ削除しようと思ったけど、彼と話しがしたくなって、数日後、僕の方から連絡を入れて、次の日からお付き合いが始まり、一週間後には、家出をして、彼の住むアパートに押し掛け、同棲が始まった。 だって彼、僕が同性である事を知っても、気色が悪いとは決して言わなかった。 ーだって、ユキはユキだろ? 俺が一番可愛いって思ってんだから、それでいいだろう?ー 和泉ちゃんたちに言わなかったけど、僕は、もしかしたら、”みお”っていう子の身代わりなのかもしれない。 彼、寝言で、何度かその子の名前を口にしていたから。きっと、そう。 だから、いつもキスまでで。 えっちしてくれないのかも。

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