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第12話

 もし強引に迫ってくるようならそれも一興と思っていたが、リカルドは鷹揚な態度を崩さなかった。 「なるほど。では君を我々のパーティに招待しよう」 「パーティ?」 「そう。お互いもう少し知り合おう。ああ、心配しなくてもいかがわしいものじゃない」  さわやかな笑顔が添えられたお誘いに、加賀美はにやりと笑ってみせる。 「べつにいかがわしくても構わないのに」  いや、むしろその方がお互いよく知れると思うけど。  加賀美の心の声が聞こえたみたいにリカルドが微笑みの色合いを変えた。 「おや、嬉しいね。じゃあそれにも招待しようか」  会話しながらシャツの上から互いを愛撫し合って、焦らしあう。  リカルドが焦らされても楽しんでいるのがわかる。  その余裕を崩してやりたい。  背中をすこし引き寄せ、腰をぴったり合わせて揺らめかせた。まださほど反応していなかった場所が触れあって、リカルドの背筋が緊張したのが手のひらに伝わった。 「ねえ、本当にしない?」 「今日のところはね。お楽しみは取っておくタイプなんです」 「僕は出された料理はすぐに頂きたいほうなんだけど」 「今日の天ぷらみたいに?」  意外にせっかちなんだろうか。それも楽しい。  加賀美の問いに「そうだよ、熱々の天ぷらは最高だった」と囁きが返る。 「でも肉でもワインでも熟成させたら、もっとおいしくなるでしょ?」 「獲りたての魚やフルーツだってうまいだろ?」  そのねだり方がかわいくて加賀美は声を上げて笑った。

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