1 / 6
第1話
柔らかな春の日差しがカーテン越しに差しかかる。
ピピピピ …6時。
目覚まし時計の音で起き上がる。
「おはよう、お母さん」
枕元に置いてある写真に優しく話しかける。
八雲 杏蓮 は、今日から高校生だ。
トントン、部屋のドアがノックされる。「はい」返事をすれば「朝ご飯が出来てる。着替えたらおいで。」声の主は杏蓮の義理の兄、司。
彼と出会ったのは中学3年生の夏。
元々病弱な母は杏蓮が小学5年生の頃病気で亡くなり、その後父は母を失った悲しみを背負いながらも仕事を続けた。その翌年、悲しみが軽くなった頃、父の仕事場に赴任してきたのが司の母親だった。司の父親は誰だか分からない、そんな中2人は出会い恋に落ちた。それから交際を始めて結婚した。
「おはよう。司さん。」
珈琲とトーストの淡い匂いが鼻につく。
「おはよう杏蓮。何度も言っているが義理とはいえ兄弟だ、そろそろお兄ちゃんと呼んではくれないか?なんならお兄たんでもいいんだぞ、お前の外見ならショタだからな、俺は言われたい。むしろ言え。俺の性癖...俺の仕事の資料にしたいからな。」
意味のわからない発言をしているのが義理の兄の司。
彼は22歳の小説家で、裏ではBL小説を書いている。所謂腐男子と言うやつだ。
ダマっていればモデルと間違われる並の外見だが中身は変態だ。人は見かけに寄らないとつくづく思う。
「絶対言わない。いただきます。」
「そうか…そういえば今日の入学式だが母さん達帰って来れなそうだ。代わりに俺が行くからな、可愛い弟の晴れ舞台だ、カメラを持って行かなきゃな。」
変な行動取らなければいいのだが…
朝食を食べ終われば入学式の準備をする。
「杏蓮、準備が出来たら〔お母さん〕に 挨拶しなね。」
「うん、分かってる。」
ともだちにシェアしよう!