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第1話

「ただいまぁ」  仕事から帰ればだいたいいつも同じ時間。  いつもの日常。  繰り返される毎日。  そんな退屈を打ち破る、一枚のハガキが食卓に置かれていた。 「あ、おかえりおにい。それ、夏に家族旅行で泊まったホテルから。ハロウィンパーティーやるらしいけど、そのためにわざわざ行く距離やないやろ」   妹の朋子が鼻で笑い、両親も取るに足らないといった様子。ハガキはもうゴミ箱に入っていてもおかしくないぐらいの扱いだ。  だがおにいと呼ばれた男・涼司だけはそのハガキを食い入るように見入り、一字一句漏らさず熟読した。  何の変哲も無い、顧客リストに基づき、宿泊したことのある客に片っ端から送っているただのダイレクトメールだ。  パーティーは10月27日の土曜日。ホテル中がハロウィン一色となる大きなイベントのようだ。従業員は全員本気の仮装、お客さんも是非ステキな仮装でご参加下さいとのこと。コンテストもあるそうだ。  従業員は全員本気の仮装  従業員は全員本気の仮装  従業員は全員本気の仮装  涼司はもうこの文しか頭になかった。  遠距離恋愛中の愛する恋人・佐倉はこのホテルの副支配人。ということはもちろん、仮装するはず。  連絡不精で口数の少ない彼からは、そんな話一切聞いていないが。  すぐに電話して、ことの詳細を根掘り葉掘り尋問しようかと思ったが、やめた。 その代わりに、パーティーの参加を決めた。 ――彼には内緒で。

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