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第3話

 ハガキに書いてあった通り、ホテルの中は建物中がオレンジ・紫・黒で統一されていて、至る所に大小のカボチャが転がっている。  フォトスポットも多く用意されており、思い思いの仮装を施した宿泊客たちがSNS映えする写真撮影を楽しんでいた。  従業員たちも負けてはいない。  日頃紳士淑女に徹してお客様をおもてなしする彼らも、この日ばかりは返り血を浴びたナース服や頭に斧が刺さったままのゾンビなど、好き放題の服装で、それでも当然きっちりと仕事をこなしている。  夕方にチェックインしてしばらく部屋で休憩していた涼司も、パーティーの準備を始めた。 ネットで買った狼男のコスチュームを装着する。耳付きの帽子をかぶれば、顔が半分ぐらい隠れてしまうが、それが逆に好都合というもの。  赤いタータンチェックの破れた加工が施されたシャツに、ダメージデニム。足は靴がわりに獣の足に見立てたスリッパ。肘まであるグローブは肉球や爪までちゃんとついており、もふもふの尻尾もつければ完成だ。どこから見ても貫禄たっぷり、世にも恐ろしい狼男の出来上がり。ケモノっぽく、鎖を垂らした首輪もつけてみた。  鏡に全身を写し、ガオーとポーズを決めると、その出来栄えにすっかり気を良くして客室を出た。  会場となる大広間は既に多くの人でごった返していた。立食パーティー形式で、おどろおどろしい給仕が時折ワインなどを注ぎに回ってくる。  親子揃って同じキャラクターの仮装をしているファミリー、もはやコミックイベントのようなアニメキャラのコスプレ団体、もう何が何だかわからない。もしこの中に知り合いがいたとしても、絶対気づかないであろうカオスな空間が出来上がっていた。  ピンチョスや一口大のサンドイッチなど、持ちやすいもので多少の空腹を満たした後、涼司は佐倉を目で探し始める。時折移動しながら、あちこち視線を張り巡らせてみる。  が、見つからない。  別の持ち場か事務所にでもいるのだろうか。  魔女姿のスタッフからシャンパンをもらい、喉を湿らせながら捜索は続く。

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