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第5話

 腹立ち紛れに飴玉を口へ放り込むと、ドアをノックする音。 「お客様の持ち物らしきものがパーティー会場にお忘れでしたので、ご確認いただけますでしょうか」  ドア越しにこんな声がした。ホテルの従業員か。  まだ狼男のままだけど、まあいいか。  涼司はめんどくさそうにドアを開けた。  目の前に立っているのは――  さっきの、吸血鬼。  変な客に目をつけられたのか?さっきお菓子をあげなかったこと、根に持っているのか?  部屋にまで訪ねて来られると、さすがに焦る。  焦っている間に、部屋の中に入り込まれてしまった。  ご丁寧に、鍵までかけて。 「あの、ちょっと」  涼司が言いかけると、吸血鬼は強引に長い布で涼司の視界を塞いだ。 「えっ、うそんっ」  離れようともがく。  だが吸血鬼は狼男を逃す気は無いらしく、二人は揃ってすぐ近くのベッドに組んず解れつのままダイブした。 「おい離せやっ」  ロンググローブを着けたままで腕をつっぱり押し戻そうとする様は、猫が母の乳をフミフミしている様子にも似ていて、てんで格好が付いていない。  涼司を支配しているのは、恐怖のみ。  吸血鬼は親指とそれ以外の指で涼司の頬を挟み、無理やり唇を重ねた。涼司の口に入っていた飴玉を吸血鬼の舌が探り当てると、吸い取って自分の口に取り込んではまた涼司の口へ熱い吐息を添えて押し戻し、を繰り返す。飴玉が往復するごとにビチャ、といやらしい音を立てる。  どうして、こうなった。お菓子もらえなかったぐらいで、ここまでする?いや、多分そんな理由ではないのだろう。  ハロウィンに便乗したレイプ魔か何かなのか……?  男相手に、物好きな奴もいるもんだ。  目隠しされているので次の行動が全く予測できず、身構えることもできない。不意打ちで脇腹なんかを舌でつつつ、となぞられると、驚きと慄きで身が跳ねた。シャツはまださらに上へと捲られる。  涼司がつけていた尻尾を外されて、触れるか触れないかの加減で首筋から胸元を辿る。 ぞわぞわと、不快か快かどっちつかずな感覚が全身を駆け巡った。変な気持ちになりかけるのを、理性が抑え込む。

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