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第1話
秋も深まってきた昨今。世間ではハロウィンが盛況だった。だから食用ではない大きなカボチャの需要もそれなりに増えてきていて、それを確保するために日々奔走しているのが総合スーパー「ノノムラ」の営業担当桐島唄(きりしま うた)・二十七歳だった。中途採用の正社員。身長はそれなりに平均だったが、黒髪のサラサラ長髪を後ろで結んだ黒縁メガネのカタブツ営業と言うのは珍しく、よく記憶に止めてもらうことが多いと自負している。こういう仕事は覚えてもらってナンボにもなる仕事なので、まずは外見から。営業で長髪メガネは印象に残るだろうと言うのが唄の疚しい算段だった。
この容姿で取ってきた仕事は数知れず。時には体を使ったりもしたのだが、それは相手がイケメンな時に限った。今手掛けているのはハロウィン用のカボチャの確保。この種のカボチャは、本来なら食用ではなく家畜用になる。だが、昨今の需要からスーパーでも扱うこととなったので確保に大変なのだ。
『これは別に食べられないと言うわけではないんですよね?』
『一般的には食べないと言うだけです。通常は豚の餌などに回されることが多いですが、人が食べても毒ではありません』
『では何故食用にならないんですか?』
全体会議でこのカボチャの話題になった時、唄が聞いた質問だ。それに対し、本社の社員はこう答えた。
『不味いからです』
『不味いんですか?』
『はい』
『どう不味いんですか?』
『そうですね……。歯ごたえはそれなりにあるんですが、味がしない。つまり美味しくないんですね』
『へぇ……』
『だから今までは家畜用だったんですが、今年から我がスーパーでも各店舗取り揃えようと思っていますので、その確保をよろしくお願いします』
『それは……』
『ハロウィン用です』
『つまりディスプレイする用ですか?』
『ですね』
『へぇ……』
『ですが、けして食べられないわけじゃない。そこのところを前面に出しての配置及び売り出しでお願いしますよ?』
『……はい』
言われたのは販売開始の一カ月前。少々無理があるだろうとは思ったが、他がしてないことをいち早くするのがまたこのスーパーのいいところでもあると踏んだ唄はハロウィン用のカボチャの確保に励んでいた。そして目を付けたのが加山農園だ。家族経営の一般的な農家だが、中心となって働いているのが加山荘太(かやま そうた)と言う、美丈夫が気に入った。逞しい体に180以上ある身長。何より色黒なのにガサツさがなくイケメンだと言うのが良かった。ハロウィン用のカボチャ確保を開始してからすぐに目を付けて迫った。最初は藁の置かれた納屋で抱き着いてキスをしてモノをしゃぶった。すこぶる元気が良くて作った笑みが消えなかったくらいだった。
「家畜用のカボチャを一畑欲しいんです」
「ああ、あれ?」
「はい」
「あーーー。あれね……」
「どこかと特別な契約でも?」
「いや、別にそんなことはないけど」
「だったら是非ノノムラにお願いします。家畜用よりも高く買い受けますよ?」
「いいんだけどさ、あんたはそのために俺にこんなことしてくれたのか?」
「こんなこと?」
「そりゃ……そのっ……性処理ってかさ……」
「性処理?」
「俺っ……としては嬉しいんだけどっ……。仕事として、そんなことしてるとしたら……」
「したら?」
「ちょっと悲しいって言うか、何て言うかっ…………」
しどろもどろになっている彼にちょっと面食らった。今まで仕事を取るのに色々なことをしてきたが、そんな風に言われたのは始めてだったので、その新鮮さが際立った。
「私のこと、嫌いですか?」
「……嫌いじゃないよ。むしろ好きだよ?」
「私……男の人と正式にお付き合いしたことないんです」
「え?」
「あなた……私と正式なお付き合い、してくれますか?」
「それって……どういうこと?」
「仕事とは関係なく、私とエッチしてくれませんか?」
「え……」
「駄目ですか?」
「いや。本当にいいのかなって……ちょっと今面食らってるっ……」
「駄目ですか?」
「駄目じゃないよっ」
「良かった……」
「あのさっ……桐島さんは」
「唄、と呼んでください」
「唄さんはさ……」
「はい」
「あのっ……女みたいに出来るのかな…………」
「とは?」
「挿れれる?」
「挿れたいですか?」
「うんっ」
大きく頷かれて笑いが込み上げてしまう。だけどそこでおおげさに笑ってしまっては手に入るものも手に入らなくなってしまうので、ここは余裕のほほ笑みで返す。
「私、それ大丈夫ですよ? 今はちょっと突然なので遠慮しますが……明日。明日だったらちゃんと心も体も準備してきますので」
「ほんとに?」
「はい」
「ほんとだったらマジ凄いっ」
「大丈夫ですよ。では明日、ここで、この時間に」
「うんっ!」
彼の喜ぶ顔が忘れられない。
唄は家に帰ってからもそれが忘れられずに太めの男根で自分自身を攻め立てて満足させたのだった。
〇
そして言葉通り翌日。唄は昨日と同じ時間、同じ場所で彼と向かい合っていた。
「私、ちょっと今日は用意してきたものがありますっ」
「なに?」
「ちょっとの間、後ろ向いててもらえませんか?」
「いいけど……」
まだまだ彼は同性には慣れていないと踏んだ唄は、去年の忘年会で披露した上下黒のミニスカポリスの衣装に着替えると結んでいた髪を解いて、っぽい帽子を被ると身なりを整えた。
「あのっ、いいですよ。こっち向いてください」
「……はうぅっ……!!!」
こちらを振り向いた彼は心底驚いた顔をして、ガタッと片方の膝をついてしまうくらいびっくりしていた。
「ぁ、こういうの……駄目でしたか?」
「いやっ……何て言うか……」
「男に慣れてないかな……と思ったので、最初はこんなののほうが勃つかな……と思って……」
「いやっ。いやいやっ……。何て言うかっ……そのっ……。凄くイイッ!!」
「そうですか?」
「うんっ!!」
「でもさすがに足がスースーしますね」
気にして自分の素足を見る。そして相手を見つめると、彼は鼻血を流しそうなくらい真っ赤な顔をして鼻の下を伸ばしていた。
「あっ…大丈夫ですかっ?!」
「大丈夫。大丈夫大丈夫だから……。それにしても…………なんて目の毒なんだ」
「そうですか?」
「ああ。とても素敵だ……。その生脚……。スカートの中はどんなんなんだろう……」
「確かめてみますか?」
いいですよ? と言いながらハイヒールでしなやかに一歩彼に近づく。
「私は、どうですか?」
「女みたいだっ……」
「でも女装なんですけどね」
ふふふっ……とほくそ笑みながら肯定的な彼に嬉しくなる。
「中身、触ってみます?」
「ぅっ…うんっ……」
彼の手を取ると自分のスカートの中に導く。中は衣装と同じ黒色のボクサーパンツで色気も何もないのだが、急いで着替えたせいでしっとりと濡れていた。それにも増して彼の手が熱いのを感じる。やんわりとモノを触られて匂いを嗅ぐように顔を近づけられると、ちょっと恥ずかしくなるのだが、逆に今からすることにワクワクもしていた。
「女物の下着のほうが良かったですか?」
「いいよ、どっちでも。どうせすぐに脱ぐんだから」
「ぁっ……んっ…」
導いた手がスカートの中でサワサワと蠢きだす。それからはもう夢中で、ふたりして積み上げた藁にダイブすると体を弄り合った。
「んっ…ん…んんっ…ん…………」
キスをしながら彼のシャツを引き出すと素肌の背中を触る。彼は唄の短いスカートを捲り上げると下着を剥ぎ取った。股間が剥き出しになると同時にヒールを脱いで彼に脚を絡める。カチャカチャと彼がベルトを外して下着ごとズボンを降ろした。
「すぐ挿れていい?」
「いいですよ。あなたの熱くて太いモノを私に挿れてグチャグチャにしてください」
「言われなくてもっ」
フンフンッ! と鼻息荒くモノをしごくと秘所に押し当ててくる。彼は「挿れるよ」の一言もなくソレを唄の中に一気に押し込んできた。
「ぅぅぅっ……ぅ……!」
「ぁぁぁ…………んっ…凄っ……。狭っ……ぃぃっ……!」
「あああっ…ぁ…ぁぁぁ……んっ! んっ! んっ!」
「唄さんっ……! ああ……凄いっ! いいっ! 凄くいい感じだっ!」
「ぁぁぁ……んっ! んんっ! んっ!」
ガンガン攻め立てられて激しく体が揺さぶられる。藁に埋まってしまうんじゃないかと言うくらい突き上げられて洋服が淫らにはだける。唄は倒れ込んだ時に帽子が吹っ飛び、スカートは捲られて腹巻き状態だし、上のブラウスはガンガン攻められている内にボタンが吹っ飛び乳首が露わになっていた。
「唄さんっ、エロいっ……ぃぃっ……! 凄いっ……! いやらしくていいっ……!!」
「んんっ! あっ……んっ! ぁんっ! あんっ!」
準備はしてきたものの、思っていたよりも勢いのいい彼にちょっとばかり驚く。唄は壊れる前に自らのメガネを外すと藁に放った。そして彼の首に手を伸ばすと唇を重ねたのだった。
「んっ…ん……んんっ…ん……」
「ふ…ぅぅ…ぅ………んっ……」
互いに互いの舌を確かめるように何度も角度を変えて舌を絡ませると髪をクシャクシャと弄くり回す。それが終わると、唄は自ら体を反転させて後ろからの行為を求めたのだった。
「後ろからも……お願いっ……っ…ぅ…ぅぅ……」
「ぇっ…いいのっ?!」
「ええっ……是非っ……っ……ぅぅ……ぅ……っ!」
苦しいことは苦しかったが、それよりも彼と快楽を味わいたかった。唄は四つん這いになると彼を後ろから受け入れて腰を振った。
「んっ! んっ! んっ……んっ!」
「唄さんっ! 唄さんのっ……触ってもいい?」
激しく首を縦に振ると腰を掴んでいる彼の手を自分のモノへと持っていった。
「触ってっ……! いたぶっていいっ……! 突いてっ……んっ! んんっ! んっ……!」
モノを出し入れされながら前を他人に弄られるのは、とても気持ちいい。だから唄は知らず知らず陶酔して腰をくねらせ口元を緩ませていたのだった。
「ああっ……唄さんっ……! 唄さんっ……! 凄っ……いいっ! すっごくっ……ぅぅ……!」
「ああっ…ぁ……んんっ! んっ! んっ! んんっ!!」
唄は突かれながら彼の手の中で果てた。そして彼・荘太も唄を十分に味わってから果てたのだった。
○
「私は……どうでした?」
ふたりして藁の上で抱き合ってまどろんでいた。唄も凄く満足していたのだが、それは荘太のほうが上だったのかもしれない。
「ぇっ……と……。何かすげー良かったって言うか……」
「それは良かった」
「あっ…あんたは?」
「この上なく良かったですよ?」
「そっ…そうかっ?!」
「私たち……仕事以外のお付き合い、出来そうですよね?」
「もちろんっ!」
「良かった。とても嬉しいですっ」
「あっ…あのさ、ちょっと聞いてもいいかな」
「いいですよ?」
何ですか? と相手を見つめると困った顔で言われた。
「女装は趣味?」
「お嫌いですか? それともお好きで?」
「……俺、あんたは普通のほうがいいと思う。てか、スーツのあんたと犯りたいな」
「あ、そうですか。それは意外。だったら今度からは手間が省けますね」
ふふふんっ…と鼻歌を歌いながら相手に抱き着いて脚を絡める。
「もう一度しますか? それとも私のメガネを探してくれますか?」
「メガネは遠くに放ったよな?」
「ええ」
「だったらもう一回してから探そうか」
「了解」
藁の中は暖かい。そして秋の夜はまだまだ長かった。
終わり
タイトル「最初はコスプレ、次スーツ」
20181020
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