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月蔭(おもかげ)-2
「こんなになるまで飲んで……」
少し前まで開いていた瞼は、今はぐっすり閉ざされて。
アルコールの匂いと一緒に、ソファーに寝っ転がっている……
ほかの男の匂い、付けてくるよりマシか。
「ほんと、お前ってさ」
ソファーに腰を沈め、寝息を立てる頭をそっと……こつん。
肩に置いた。
馬鹿な奴……
ひとすくいした髪、耳の縁にかけてみる。
目を覚まさないなんて。
無防備過ぎる寝顔だな。
「なぁ」
聞いてる?
「お前は魔法、使えないだろ」
使えねぇクセに。
使うなよ。
好きな奴とそいつの好きな子との縁、お前が取り持って、どうする?
無理して使った魔法の代償は、お前が振られるって事だぞ。
分かってて、それでも……
好きな奴の笑う顔、作りたい。……って、必死になってたんだろ。
そういう奴だから。
お前って。
「それで幸せ?」
思わずついて出た言葉に、唇が震えたのと同時に。
ヒクン、と……
肩に触れている頬が揺れたのは、俺の気のせいだ。
お前、寝てるし。
冷たいような、熱いような……
掌が包んだ頬には、水の跡が残っている。
そこに触れると、飲みこぼして伝った口許の水跡から、指の腹に体温がしんしんと染みてくる。
撫でるけれど。
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