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月蔭(おもかげ)-6

真っ赤な紅葉が散るように…… 目を赤くして、涙をこぼしていたのだろう…… 掌が撫でる。包んだ頬を指でなぞって、そっと…… 「意識しろよ」 俺は雄だ。 優しくしたいけど、優しくできない。 手の中の頬が小さく動いた。 お前は夢の中にいるのか? 水の伝った口の端に指を這わせる。 俺は魔法使いじゃないから、魔法は使えない。 魔法がないから、夢の中のお前には逢いにいけない。 ……お前が俺に逢いに来るんだよ。

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