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第4話(前半)

「ねぇスィム、ライル」 『む?どうしたカナタ』 (どうしたの~?) 「今って、何年何月何日?」 まるで鶴の一声のように静かに響いていった質問、スィムとライルは回答を持っていなかった。 「ねぇ待って静かにならないで、今日っていつくらい?スィムとライルと出会っていつくらい?」 『それは分かるぞ、大切な日だからな』 (僕も分かるよ!) 『(ちょうど365日たった!)ぞ』 「もうそんなに経ったのか…一年って早いんだな」 『カナタもスィムも不老不死だからな、1年なんてそこら辺の砂粒のようなものだろう』 「ん~、とりあえずゴマで」 『えっゴマ』 「うん、ゴマ」 のんびりとした平凡な生活を時間を気にせずに生きてきたものだから今がいつになったのかが全く分かっていなかったが、確かに家の周りを見てみるとあの時と同じような風景に移り変わっていた 「あの時は凄かったね」 (そうだね!ライルはカナタに敵意むき出し!) 『むっ昔のことだ!今はちゃんと大事だぞ!』 (人間は?) 『大嫌いに決まっているだろう』 「だよな、俺も嫌いだ」 (僕は~…よくわかんないけどカナタが嫌いなら嫌い!) 「…ふふっ」 『まあスィムらしい回答だな』 と、当然のようにのんびりと会話しつつ同じソファでくつろぐ異種達。スライムのスィム、ドラゴンのライル(結局名前は出てこず、なおかつライルが気に入ったのでこのままになっている)そして…【人種】のカナタ。 「…」 『む?どうした?』 (具合悪い?) 「んにゃ、大丈夫」 不安そうにカナタを見つめるモンスター2匹。傍から見ればなんともおかしな場所だが、ここにはそんな小さな世界を邪魔する者は居ない。 「久しぶりに、森探索してみるか」 『おー、行くのか』 (また新しい家族が出来るかもね!) 『うむ、そうだな』 「一応2人はお留守番してて、スィムは襲われたりしたら怖いし、ライルはもし人間に見つかったりしたら怖いし…」 『…そうか、気をつけるんだぞ。我らもカナタを失うのは怖い』 (そうだよ!絶対帰ってきてね!) 「ああ、まあこんな森に入ってくるやつなんて前の盗賊くらいだろ?」 『まあ、それもそうだな』 (カナタは強いもんね!) 「まあね、じゃあいってきます」 『いってらっしゃい』 (いってらっしゃーい!) モンスターの方では (…心配だな~…) 『ああ、どうやら近くに人間が居るようだしな』 (えっ!?カナタが危ない!助けなきゃ!) 『いや、大丈夫だろう。まず近づかないだろうしな』 (う~ん…だってカナタお人好しだよ?優しすぎるんだ、きっと困ってる人がいたら助けちゃうに決まってるよ…) スィムが心配していたのはカナタの性格上、困っている者がいたら誰でも助けてしまう優しい性格だから(実際色んなモンスターを助けているからモンスターの近所さんがいっぱい居る)今回どうやら迷い込んでいる人間もきっと話しかけられたら助けてしまう。それに… (カナタは可愛いから攫われちゃうよ!!) 『う~む、確かに男の割には細く色白であるしなぁ…』 カナタはこの世界の基準が分かっていないから危機感を持っていないがこの世界では色白はとても珍しくとても美しいことから男女関係なく女神と呼ばれる存在、それは顔の美しさを問わない。しかし、カナタは顔もとても整っていた 、それも中性的な方向に。スィムとライルは不安に陥ったが 『カナタは留守をしろと言った、約束を破る訳には行くまい』 (…そうだね、それにカナタは強いもん!きっと大丈夫だよ!) 『うむ、安心して帰りを待とう』 焦る自分達の気持ちを無理矢理抑えこみカナタが帰るのをじっと待っていた。 カナタの方では 「ん~…あっこっち行ったことない、行ってみようかな」 森もまだ行ったことがない場所を少しずつ探しながら薬草の場所、新しいモンスターの発見、この森全体の形を把握して行った。そろそろ一旦戻ってお昼ご飯に、と思ったその時だった。 「ん~、迷ってしまったな…どうしたものか」 「!?」 カナタは急いで近くの木の根元へ隠れる。人間だ、何故こんな所に人間が…。カナタは最早正常な考え方が出来なくなるくらい混乱していた。見つかったらどうなる、盗賊等は倒してもなんの問題もなかったのだが、今回は違う。本当に平凡な市民のような、本来こんな所に居ないはずのもの。とりあえずこっそりと逃げようとした時 パキッ 「っ!?」 「!、誰かいるんですね!」 下にあった木の枝を踏んでしまい居場所がバレた、カナタは混乱していて魔法が使えない。カナタは必死に家に向かって走ったのだが 「待ってください!」 「!?、はっ離して!」 相手が早かったようですぐ捕まってしまった、相手は何かを喋っているようなのにカナタには聞こえてなかった。どうすれば逃げられる、どうすればスィムとライルの元へ帰れるのか。上手く頭が働いてくれないことでその場で掴まれた腕を振りほどくということも出来ないまま震えることしか出来ない。ピトッと頬を両手で挟まれるような感覚に恐怖等で瞑っていた目を開けると、その人は自分のことを覗き込んでいた。と言っても、その顔は正しく心配だと書いてあったので錯乱することは無く、不思議と安心感を得て。カナタはだんだんと混乱が収まっていった。 「…落ち着きました?水飲みます?」 「…大…丈夫…」 久しぶり(と言うかこの世界に来て初めて)に人間と話すものだからなんと話せばいいのか分からなくなりつつ、必死に言葉を紡ごうとする。本当は逃げ出したいのだが地味に優しく袖を掴まれているので逃げ出せず。一応混乱から助けて貰っているので恩を返さない訳にもいかず今に至る。 「えっと、とりあえず自己紹介を。私の名はカルマと言います。」 「…カナタ」 「カナタって言うんですか!いい名前ですね!」 カルマと名乗るこの男は盗賊に追われていたところ入っては行けないと言われていたこの森に逃げ込んでしまったのだと言う。 「珍しいですね、この国では肌の白い人は珍しいのに…。」 「珍しい…のか?」 「ええ、あんなにいる人の中でも数人しか居ない珍しい存在ですね」 「…でもお前も白い」 「まあ、私は仕方ないのですが」 「…?」 「それより私はあなたのことを国の中で見たことがないのです。あなたはいつもどこで…」 「お前は、森で迷ったんだろ」 「えっ、ええ」 「案内、してやるから。」 「えっ、道を知っているのですか?」 全体的に質問には答えないカナタ、自分がここで住んでるとバレてしまえば、きっと他の人間共も近寄ってくるに違いない。第一、こいつが広げかねない。そう考えていたから会話も最小限に抑えただひたすら進んでいた。 「…もしかして、あなたはこの森に住んでるのですか?」 「…」 「あの」 「…敬語じゃなくていい」 他の話題がなかったために犯したこと、敬語じゃなくていいなんて言葉は何かと関わり合いが出来てしまう元凶にもなる。 「!、分かった!」 「(ほら、やっぱり)」 カナタは自分の口にした先程の言葉を後悔した。もしかしたら根掘り葉掘り聞かれてしまうかもしれない。そうすればスィムもライルもタダでは済まないだろう。 「カナタはこの森に…住んでるんだね?」 「…そうだ」 最早ここまでか…。そう思った時。カルマは思いがけない言葉を口にした。 「そっか!じゃあ、今度君に会いに来る時はこの森に来ればいいんだね!」 「…はっ?」 「だって君はここに住んでいるんだろう?ならここに来れば他の人はいないから君に会えるじゃないか!」 「…周りのやつに言わないのか」 「?、何を?」 「この森に人が住んでること」 「言うわけないじゃない!第一私の周りには人は近づいてこない。来ても欲にまみれた者ばかり、君が初めての友達なんだ。」 友達…。こいつも1人だったのか。周りに言わないと言われ少し安心し、そして 「また…来るのか?」 「ああ、ダメかい?」 少ししょんぼりとした顔で言われてしまうと拒否できなくなり、カナタはつい「いいよ」と言ってしまった。カルマはとっても嬉しそうにしながら 「じゃあ、また明日すぐに来るよ!」 「…そうか、俺がこの森の入口に居ないことも考えないのか?」 「?、カナタは約束を破るような人じゃないでしょう?」 「…」 カナタは確かに約束を破るようなことはしない、それにしても、カルマは考えが軽すぎる。と少し呆れながら森の道を歩く。 「あの場所を抜ければ外だ」 「そっか…」 「?、どうした」 「いやっ、なんでも…」 「?」 カルマは街に出れると知った瞬間明らかに嫌そうな顔をした。 「…嫌なのか?」 「えっあっ違っ」 「…嫌なら…また明日、ここに来れるって思えばいい」 「!、…うん、そうだね!おやすみカナタ、また明日!」 「ああ、また明日」 人間《カルマ》との初めての約束は、少し怖かったが、少し嬉しいことに気づかずにカナタは1人静かに自分の家へ帰った。 「ただいま」 (あっ!カナタ!大丈夫!?怪我してない!?お腹すいてるよね!?用意出来てるよ!) 『森に人間が侵入していたようだが、遭遇してないな?』 「…うん」 『そうか…よかった、カナタが無事なら良い』 この日、家族の温かみが1番染みて、初めて家族に嘘をついた日だった。それからのこと、カナタはカルマとよく約束をするようになった。スィム達には内緒で、こっそり会っては話をするようになった。そのうち2人はどちら共が大切な友達になっていた。二人ともそれぞれの家族に内緒で会っていた、それに罰が当たってしまったのかもしれない。ある時、いつも通りにカナタは森の入りへ行った。 「カナタ!来ちゃダメだ!!」 「えっ」 「カナタ?誰だ、それは。それにそっちは森だ。お前まさか森に…」 「走れ!!早く逃げてくれ!!」 「っ!」 「おい!逃げるとはどういうことだ!森に言葉が通じるものでもいるというのか…?おい、お前ら捕まえろ!」 「やめろ!離せ!」 「止まれ!お前は跡取りだ、こんな所でカンタンに死なれては困るんでな。」 カルマが誰かに連れていかれるのを遠くで見るしかなかったカナタは、カルマが逃がしてくれたこの機会を無駄にしては行けないと急いで転送魔法を使う。 「テレポート!」 「おい!そこにいるんだな!出てこい!」 よく分からない鎧の男共の声を片耳に、転送魔法で森の奥の自分の家へ逃げた。 「…ただいま」 (カナタ!!おかえり!大丈夫!?怪我してない!?) 『スィムはそれしか言えんのか』 (だって!心配なんだもん!) 『まあ気持ちは分からんくもないが…』 「…ねぇ、スィム、ライル」 (?なぁに?) 『うむ、どうした?』 「…もし、俺に人間の友達が出来て」 ()ドンガラガッシャーン 『う、うむ』 「その…とも…だ…ち…が…っ」 (…カナタ、大丈夫、落ち着いて、聞いてるよ、大丈夫。) 『そうだ、何かあれば力になる。例えその人間であろうとな』 「…っ、ありが…うっ…ひっく…~っ」 (ああ!待って目ぇ擦っちゃダメだよ!赤くなっちゃうよ!) 『カナタは泣き慣れてないのだな』 「うぅ…うるさ…い…っ…」 『ほれ、ハンカチ?とやらだ』 「…ありがと…落ち着いた…」 『うむ、良かった良かった』 (それで、カナタ。どうしたの?) 「うん、それが…」 カナタはその友達、カルマが攫われたこと、必死に自分を逃がしてくれたこと。そして今まで黙っていたことへの謝罪を口にした。 (そっか…) 「…うん、黙っててごめん」 『カナタは』 「…?」 『その人間とどうしたい?』 「どうしたいって…」 『このままずっと離れて二度と会わずにまたのんびり暮らすか』 (それともその人間、カナタは助けたい?) 「…」 『…まあ確かに我らは人間は大嫌いだ、カナタを除いてな』 (でもそんなカナタが許せる人間なら、僕達は助けるよ!まあカナタが助けたいならだけどね!) 「…俺…は」 「…俺は、カルマを助けたい。」 後半に続く…

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