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第78話

「おまえ──やったのか、音稀の親まで……」 「あはは。そうよ、でも間違えないで。殺ったのはあんた」  そう決めつけ話す慶子は完全に壊れていた。もう善悪どころか、自分が犯したのか他人の犯行かすら理解できてねえみたいだ。  ぎょろぎょろとした目が血走っていて、極度の興奮状態にあるのが分かる。拳銃を横に振り、俺を音稀のそばに移動しろと促す。それから今度は下に動かす。床に寝ろってことか。  慶子が言う。 「この拳銃で、あんたが香奈と音稀くんを撃った。ご両親もね。そして最後に最愛の恋人と手をつなぎ、自ら命を絶つ──なんて屑らしい身勝手な死に方かしら」 「じゃあバイバイ」と話を終えた慶子。かちゃりと引き金をひく音がした。  目をつむりそのときを待つ。  音稀……ごめんな、守ってやれなくて。となりで眠るように逝ってしまった音稀の手を取ると、すぐに俺もおまえのところに逝くからなと心ンなかで懺悔する。  すべて俺が悪い。慶子を鬼に変えたのも俺だ、そのせいで大切なやつが殺されたのもみんな俺が馬鹿だったからだ。死んで詫びになるとも思えねえが、もう俺には償うすべも時間もねえ。  親父、お袋、ごめん。迷惑かける───

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