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両片想い26

「俺なんて、大事にする価値なんかないだろ。どこにでもいる普通の男さ」  コイツは知らない――金を得るために、自分の躰を簡単に売る男だということを。 「そんなことない、価値はあるって。大人でしっかりしたところがあるくせに、儚さみたいなものがあるのを、子どもながらに感じていた。俺が守らないと駄目なんだって思わされた、大切な人だから。こんなふうに誰かのために何かしなくちゃいけないって考えたのは、はじめてなんだよ」  さらにキツく抱きしめる壮馬の両腕の強さに、愛おしさがひしひしと募っていく。思わず「好きだ」と叫び出したいくらいに。 「お前は俺の本当の姿を知らないから、そんなことが言えるんだ」  いつか別れる未来のために、少しずつ嫌われなくてはならない。それがコイツのためになる。 「知ってるよ。家庭教師をしていたときは俺と交渉したみたいに、高校生に勉強を教えながら、エッチなことをしていたんでしょ?」 「ああ……」  見つめられる壮馬の視線を逸らさず、しっかり受け止めながら答えた。 「だけど俺と本格的に付き合ってからは、誰とも何もしていないよな。他の男の匂いやキスマークも、一切なくなったし」 (恋人になる前後の違いを、壮馬なりに感じていたのか。あのときは適当に生きていたから、その雑さ加減が出ていたんだな) 「確かに、その通りだ」 「なぁ、俺ひとりに絞った理由ってなに?」 「まずは躰の相性が良かったことと、お前が社長の息子だったからさ。都合のいい関係になるには、ちょうどいいだろ」  いつか訊ねられると考えていた質問だった。予め用意された嫌われるための返答を、淀みなく言い伝える。 「鉄平は嘘が下手だね。どんなに言葉に感情を込めても、目が虚ろなんだよ。まんま嘘ついてますって表してる」  目は口ほどに物を言うって言いたいのか。参った――。 「嘘じゃない。お前のコレは俺を満足させるのに、ちょうど良かった」  瞳を細めながら無理やり微笑んで両目の感情を消しつつ、壮馬の大きくなったモノに手を伸ばした。 「お前、どうして勃起してないんだ」  今までの話の流れで、興醒めしたのかもしれない。それなのに俺は壮馬に与えられた熱を、そのまま保温しているみたいだ。こんな話をしていてもおっ勃ったままでいられる神経は、おかしいと思われるかもな。

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