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シェイクのリズムに恋の音色を奏でて20
「え? 智之さんがゲイだって言いたいの?」
彼女からの問いかけに、聖哉は黙ったまま俺に視線を向ける。この質問については俺が答えろと、暗に示していることがわかった。
「サオリさんは店のお客様ですので、俺の趣味を知って幻滅することを隠していました。実はそうなんです」
「だったら、ゲイだっていう証拠を見せてよ」
「しょ、証拠!?」
そんなもん、なにをどうしたら証拠になるんだよと、必死に考えながら混乱していると。
「石崎さん、昨日僕にしたことを、ここでやれば証拠になると思います」
聖哉が静かな声で告げた。
「昨日したことって、ここでやるのかよ!?」
反射的に答えた俺に、聖哉はいたって淡々と答える。
「恥ずかしいですけど、それを見せなきゃ納得しないんじゃないでしょうか。僕は大丈夫ですから、やっちゃってください」
聖哉は恥ずかしいと口にしたくせに、そんな感じをまったく見せず、俺の腕に縋りつきながら、ゆっくり瞳を閉じる。意を決して俺は顔を近づけ、唇を合わせた。
(俺としては棚からぼたもちだが、聖哉は今どんな気持ちで、キスを受けてるんだよ……)
昨日よりも5秒ほど長くキスして、顔を外した。
「サオリさん、納得してくれましたか?」
聖哉の心情が気になりつつも、目の前の厄介な客から対応する。すごく嫌そうに顔を歪ませた彼女は、舌打ちしながら街中に向けて駆け出して行った。
「聖哉ごめん。俺の事情に巻き込んでしまって」
「念のため、このまま一緒に帰りましょう。人の嫌がることを、平気でする人です。僕らのあとをつけるかもしれません」
俺と腕を組んだまま歩き出した聖哉に合わせて、俺も歩を進める。
「石崎さん、気にしないでください。実は僕、男性とキスしたことがあるんですよ」
聖哉の爆弾発言に、驚きながら訊ねてみる。
「そうなのか?」
「大学のコンパで王様ゲームをしたときに、先輩にされちゃいました」
「俺のキスは、罰ゲームなんかじゃない。本気なんだけど……」
こんな言葉をわざわざ言うべきじゃないことくらいわかっていたが、自分の気持ちが軽いものにとられたくなかったので、あえて告げてしまった。
「……すみません」
言いながら聖哉が俺の腕に絡めた腕を外しかけたので、慌ててその手を掴み、恋人つなぎした。
「外してほしくない。もし彼女があとをつけていたら、この状況をなんて答えればいいんだ?」
「それは――。あの、考えてませんでした。すみ」
「謝らないでくれ。お願いだ、このまま歩いて行こう」
俯いて謝りかけた聖哉の手を、ぎゅっと握りしめる。触れる部分が増えるだけで、愛おしさが増していく気がした。
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