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【序】
狼男はびしょ濡れで、電話ボックスに駆け込んだ。
突然の雨に街は大混乱だ。
雨音と一緒に足音が駆けていく。
魔法使いもカボチャも、ドラキュラも悪魔もゾンビも、所狭しと軒下や木の影に集まって雨をしのいでいた。
リボン……魔法使いが落としていったのだろうか?
電話ボックスのドアの前で、拾った赤いリボン
雨が止んだら、お前の持ち主、迎えに来てくれるといいな……
電話台にそっと置いた。
乾かしてあげる事はできないけれど。
雨に濡れる事はないよ……
冷たい雨が、頬を伝った。
これは雨だ……
雨なんだ……
頬を滑り落ちた雫は、ただの雨粒
俺、びしょ濡れだからさ。
前髪から滴ったんだ。
ひとりぼっちの電話ボックスの中で、ほっとしてる。
雨のどさくさで、先輩から離れられて……
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