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僕の正体 前
団長さんの言う通り、僕は人じゃない。
正確に言うと半分人で半分龍なんだけど。
龍は神の眷属で、魔物である飛竜や地竜なんかとは異なる存在。
僕はその中でも癒しの力を持った白龍の血を引いてるんだ。母が白龍で、父は人であること以外わからない。人に強い興味を持っていた母が龍の里を出て、どこかで身籠ってしまったみたいで、里に帰ってきた時には母は大きなお腹をしていた。そして生まれてきたのが僕。
五歳になるころに母が5つある龍王の座の一つに選ばれてしまって、百年ほど会えなくなってしまった。
それからは里の龍たちに育てられた。皆、半龍の僕にも分け隔てなく接してくれて、とても恵まれてたと思う。
けれど僕は欠陥があったんだ。龍になれない、っていう。だからずっと人型。
そのこともあって龍として暮らすことに迷いがでてきて、ちょうど里を訪れていたおじいちゃんに誘われて一緒に里を出てきたんだ。
この国は混血種には比較的寛容なんだ。とは言っても、突出した能力は恐れられるし、規律を乱してしまうことになるから、僕が起こしたような事に厳しいのは当たり前。
ただ僕の場合、亡くなった人を生き返らせること以外なら、なんでも治せてしまう特化した性質を持ってるから、あまり存在を知られるのは好ましくない。
でも、小さい村でこそこそしてるよりも、大勢の中に紛れてしまう方が龍がいるなんて誰も想像できないし良いんじゃないか、って言うおじいちゃんの提案で、王都に移住してきたんだ。実際僕以外にも沢山混血種が住んでるんだよ。
もちろん里を出るときには皆に止められたけど、一度興味を持ってしまうともう気持ちを抑えられなくて、反対を押し切って里を出てきてしまった。
母譲りの血が騒いだんだと思う。
母がどんなところにいたのか見てみたかったし、もともと人の街にも行ってみたかったんだ。
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