38 / 144

青空とうわの空ー3

「…だ、だって…」 「だって…?」 「…け、結婚、できないじゃないか」 「……だから?」 「だから…って…」 「結婚できる国だってあるじゃないか。それに結婚といっても、婚姻届け一枚の契約だろ。オマケに結婚せずに事実婚している男女だっているだろ」 ………う………。 「俺が隼人を好きなのは誰にも止められないよ。昔から好きだったんだからね。俺が女性になって隼人が俺を好きになってくれるのなら、女性になってもいいと思える程には隼人を好きなんだ」 …そんな瞳で僕を見るな~!! 思わず、クラッとしちゃうじゃないか~。 …いやいや、治夫にクラッとしてどうする。 しっかりするんだ、僕!! 「…あ…そういえば、時間があれば僕のところに来ているみたいだけど、勉強、大丈夫か?」 慌てて話題を変えた。 「何、心配してくれているのか?」 「いや…心配っていうか…」 「隼人~、先生が呼んでたぞ」 丁度、クラスメイトが僕を呼ぶ声が聞こえて、ホッとする。 今は昼休み。 僕のクラスにて。 食事が終わり、治夫に口説かれ…ゲフンゲフン、治夫と無駄話をしていたところ。 「何、したんだ?」 僕を呼ぶ声に、まるで初めからこの教室のクラスメートみたいな顔をして、僕の前の椅子に座っていた治夫はそう聞いてくるが、覚えのない僕は首を傾げる。 「…何だろ?わかんないけど、ちょっと行ってくる」 席を立ち、教室を出た僕の前に寧音が立ち塞がった。 「隼人と話がしたくて呼び出してもらったの…来て」 「…じゃあ、先生が呼んでるっていうのは…」 「…嘘よ」 戸惑って聞いた僕に、寧音は振り向きもせずそう言って、廊下を歩き始める。 僕は慌てて寧音の後を付いて歩いた。

ともだちにシェアしよう!