69 / 144
恋と嘘と現実とー28
「…同じクラスの友人と居たら、おかしいわけ?これが普通だろ。違うクラスの治夫と一緒に居た今までがおかしいんだよ」
「だって、俺達、親友だったんだろ?」
「…親友だからって、そんなにベタベタ一緒に居ないだろ、普通。それより、寧音と一緒に居てやれよ。お前達、付き合っているんだからさ」
自分が口にした言葉に、自分で傷付く。
だが、僕も、もう限界だ。
治夫と寧音が一緒に居る姿を、目の前でいつまでも見続けているのは…。
「…付き合って…いたのかな…」
「………え?」
「…いや…なんか、実感がなくて。俺が事故にあう前から、俺達、本当に付き合っていたのかな…?」
事故にあう前から…?
治夫の言っている意味がわからない。
治夫と寧音が付き合い始めたのは、入院している時だろ?
事故にあう前からって事はないはずだ。
だってその時、治夫は僕の事が好きで…事故にあう直前まで僕を口説いていたのに…。
「…隼人に関する記憶以外に、事故にあう前から寧音と付き合っていたっていう記憶もないんだ。だからかな…なんか、しっくりこなくて…」
…そうか。
寧音のヤツ、そんな嘘を付いていたのか…。
「…好きな人はいたと思うんだ…なんとなく、だけど。ただ…その相手が寧々だと言われても…なんか、ピンとこなくて…なあ…隼人なら知っているだろ?俺が好きだった人。教えてくれよ。俺、本当に、寧音と付き合っていたのかな…?」
…そんな事、僕に聞くなよ。
本当の事、言えるわけないだろ。
治夫が記憶をなくす前、本当に好きだったのは僕だ、なんて。
「…寧音がそう言うのなら、そうなんだろ」
「……隼人も知らないのか…?」
…やめろ。
そんな、情けない声、出すなよ。
治夫には似合わないだろ。
そんな…途方に暮れたような…そんな声。
聞きたくない。
治夫のそんな声を聞きたくなくて、思わず口走っていた。
「…イヤ、付キ合ッテイタ。ウン。確カニ、二人ハ付キ合ッテイタト思ウヨ」
………ああ……我ながらなんて嘘が下手なんだ……これじゃ治夫に疑われるじゃないか。
「………本当に?」
………ほら、やっぱり。
僕のそのぎこちない言葉に、治夫は疑わしそうに僕を見てきた。
…そんな目で見るなよ。
ともだちにシェアしよう!