125 / 144
いつか、君の声がー17
-僕は、怒っていた。
『治夫がK大学を受けるらしい』
そう、聞かされて。
最初はこれはもしかして僕が振られるバターンかと血の気が引いたが、よく考えたらそんな事、あるはずがない。
-と言い切れる程には治夫との付き合いは長いし、治夫の事を知っている…つもりだ。
治夫はまだ…いや、きっと、今も僕の事を好きだ。
………と考えると…………あの寧音の勝ち誇った顔を思い出し……鈍い僕にも、なんとなく治夫がK大学に志望を変更した原因が見えてきた。
すると……ふつふつと怒りが沸いてきて、無意識に治夫の居る場所…僕が苦手な場所…特進クラスへと向かっていた。。
別に、治夫が地元の大学からK大学へ進路を変えた事に怒っているわけじゃない。
治夫のレベルなら当然だと思う。
僕が怒っているのは…怒っているのは…。。
…どうして皆が知っている事を、僕が知らなかったのかという事だ。
僕より先に皆が知っていた事に怒っている!!
誰も僕に知らせてくれなかった!!
寧音だって…いつも余計な事は知らせに来るくせに…こういう時こそ、言いに来いよ…っ!!
………いや、そうじゃない…そうじゃなく…。
僕自身…そうだ、知らなかった僕自身に怒っている!!
まったく、これっぽっちも気付かなかった!!
のほほんとしすぎだろ、僕…っ!!
…あああ…のんきに屋上で空を見上げて寝転んでいる場合じゃなかった…。
1番に、何をおいても治夫に会うべきだった…っ!!
治夫も治夫だ…っ!!
そんな大事な事を1人で決めてしまうなんて…っ!!
…………………………って。
………いや、そうじゃない………そうじゃなくて………。
…僕はそれ程、頼りないのか………?
………………………いや……っ、確かに……今、治夫を好きだと胸を張って皆に宣言できるかと聞かれたら、迷うよ……迷うけど………っ!!
それを責められても………。
………しようがないじゃないか。
自分でも気が付いたのは最近なんだから…っ!!
迷って、悩むよっ。
それが悪いのかよっ!!
-もはや誰に何を怒っているのかも分からなくなったまま、僕は特進クラスの扉に手をかけ、(怒りに任せて)思いっきり開いた。
ともだちにシェアしよう!