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いつか、君の声がー17

-僕は、怒っていた。 『治夫がK大学を受けるらしい』 そう、聞かされて。 最初はこれはもしかして僕が振られるバターンかと血の気が引いたが、よく考えたらそんな事、あるはずがない。 -と言い切れる程には治夫との付き合いは長いし、治夫の事を知っている…つもりだ。 治夫はまだ…いや、きっと、今も僕の事を好きだ。 ………と考えると…………あの寧音の勝ち誇った顔を思い出し……鈍い僕にも、なんとなく治夫がK大学に志望を変更した原因が見えてきた。 すると……ふつふつと怒りが沸いてきて、無意識に治夫の居る場所…僕が苦手な場所…特進クラスへと向かっていた。。 別に、治夫が地元の大学からK大学へ進路を変えた事に怒っているわけじゃない。 治夫のレベルなら当然だと思う。 僕が怒っているのは…怒っているのは…。。 …どうして皆が知っている事を、僕が知らなかったのかという事だ。 僕より先に皆が知っていた事に怒っている!! 誰も僕に知らせてくれなかった!! 寧音だって…いつも余計な事は知らせに来るくせに…こういう時こそ、言いに来いよ…っ!! ………いや、そうじゃない…そうじゃなく…。 僕自身…そうだ、知らなかった僕自身に怒っている!! まったく、これっぽっちも気付かなかった!!  のほほんとしすぎだろ、僕…っ!! …あああ…のんきに屋上で空を見上げて寝転んでいる場合じゃなかった…。 1番に、何をおいても治夫に会うべきだった…っ!! 治夫も治夫だ…っ!! そんな大事な事を1人で決めてしまうなんて…っ!! …………………………って。 ………いや、そうじゃない………そうじゃなくて………。 …僕はそれ程、頼りないのか………? ………………………いや……っ、確かに……今、治夫を好きだと胸を張って皆に宣言できるかと聞かれたら、迷うよ……迷うけど………っ!! それを責められても………。 ………しようがないじゃないか。 自分でも気が付いたのは最近なんだから…っ!! 迷って、悩むよっ。 それが悪いのかよっ!! -もはや誰に何を怒っているのかも分からなくなったまま、僕は特進クラスの扉に手をかけ、(怒りに任せて)思いっきり開いた。

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