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泣かないで、マイ・ラブ-5

佐藤治夫をストーカー…もとい…親しくなるきっかけを探る為、調べていたら(後をつけていただけともいう)佐藤治夫は、ほとんど寮から外へは出ない事が分かった。 大学と寮の往復だけ。 人気があるからいろんな人から合コンの誘い等も多いらしいが…全て断っているらしく、だから遊びはもちろん、バイトもしていない様子だし、買い物もあまりしないのか、本当に寮から出て来る事があまりない。 ただ、唯一。 1週間に1回。 水曜日。 その日だけは寮に帰らず、図書室の窓際の指定席で手紙を読んでいる。 普段、誰にも見せた事がないような優しい微笑みを浮かべて。 夕日が彼の横顔を照らして、ますます尊く感じてしまう。 誰も声をかける事ができない。 侵す事ができない。 神聖な時間。 -…この時間がずっと、永遠に続けばいいのに…- 「…………………………よだれが垂れてるよ」 塔野の声に我に返って、急いで口元を拭う。 ………しまった。 水曜日の事は私だけの大切な秘密だったのに、話していたらつい、熱が入ってしまった…。 「でも、な~んだ。手紙って、その事か~」 …………………………………え? 最初の食いつきはどこへやら。 私の重大な内緒話を聞いて…何だ、そんな事…と言わんばかりの態度の塔野。 「水曜日の事なら皆、知ってるよ。有名だもん」 ……………………………ええぇーーー!? マジか……………。

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