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水曜日のランチダッシュ
水曜日、このフロアのランチタイムが11時―12時になる曜日だ。
近隣の飲食店の限定ランチメニューも水曜日なら確実、とみんな一斉に席を立つ。
だからこの時間フロアには誰もいない、はずだ。僕たち以外は。
待ち合わせ、というにはあまりにも変な場所。いつもの指定席である、物置の奥の、使う人が少ない男子トイレ個室に入る。
朝からちゃんと準備をしてきた僕は、これから会う人への期待で既にむずかる股間を持て余していた。
足音が近づく。
静かに開かれる扉。照明を背に受けて、逆光で顔が見えなくてもここにこうやってくるのはただ一人。
「待った?」
「おじ……、部長。いいえ、僕も来たところで」
僕を遮るように部長が片手をあげた。
「時間がないから、さぁ……」
便器越しに奥の壁に両手をついて、お尻を突き出した。
空調が効いているからお尻を丸出しにして、ワイシャツのボタンを後ろから外されたって平気だ。
部長の手がローションを擦り付けている間、ふと気づくと入社祝いにもらったネクタイが眼下で揺れていた。
ああ、外してくればよかった。
便器に付かないように慌てて口で咥えるのを見て、ふふっと後ろから笑う声が聞こえる。
ぬちぬちと音を立てながら、部長の指が僕の受け入れ口の柔らかいことを確認し、満足げに押し開げた。ひた、と太い先端が触れるのが分かる。
分かってる、きついのは最初だけ。
何度もやってるから分かってる。すぐに僕の自我が溶ける位気持ちよくなる、って。
でもこの瞬間だけは苦手だ。
「大事なネクタイだろ?落とすんじゃないよ」
言葉と同時に押しつけられた塊に身が竦む。
「!」
ネクタイを思わず噛みしめた。
尻肉を左右に押し広げながらためらいもなく推し進められ、ランチ前の空っぽの胃が押し上げられているみたいだ。
お腹空いたな、なんて思えるのは今だけだ。
部長は後ろから容赦なく肉をぶつけ始めた。筋肉の張った太腿と、柔らかい僕の尻が小気味いいリズムで当たる音がトイレに響いて、耳からも僕の下半身をとかしてゆく。
金持ちの子弟が集まる優雅な大学を出た僕は、コネを最大限に生かしておじさんが営業推進部長を務める会社に就職した。
大手メーカーの広報部印刷物担当。言われた通りに印刷物を発注するだけの仕事。間違えても取引先の営業が指摘してくれるから安心だ。
だから、今僕がここにいられるのもおじさんのお陰で、おじさんがこの会社の部長でなかったら僕はどこにも就職なんかできなかったし、こうして……
そんな事を考えていると、後ろから手が回ってきて、ちょっと触られるだけで反応するように仕立て上げられた胸の突起の先を撫でるように掠められた。
触り心地確認するように微かに触れられていると鼻から抜けるような喘ぎ声が漏れる。
「んふっ!……んん、ふっ」
もうそれ以上されると、何も考えられなくなる。
いやいやするように首を振るけれど、僕の腰は勝手に揺れていて、壁についた手が今にも崩れそうな位身体に力が入らない。
息が荒くなるけど、鼻で呼吸しているだけでは酸素が足りない。
朦朧とする頭をめぐるのは、多分大事で多分どうでもいい事。
(いま口を開ければネクタイが落ちて便器に触れるかも。部長が……今僕を後ろから僕を突いているおじさんが就職祝いにくれたネクタイが汚れてしまう。)
(イタリアブランドのおしゃれなやつだ)
僕の先から滴る蜜液と、淫らに出入りするためにたっぷりと注ぎ込まれたローションが、揺さぶられるたびに便器の縁に点々と散ってゆく。
その時、すっかり立ち上がって敏感になっていた胸の突起をきゅっと摘ままれた。
予想してなかった刺激が下半身にビリビリと直結して背中がしなると同時に思わず声をあげた。
「ああッ!……あぁん!」
おじさんの手が素早く僕の髪を掴んで、落ちそうになる上半身を支えてくれた。
喉がのけ反り、吸いこんだ息がヒュッと気管支を抜ける音がする。
「声、出すんじゃないよ。近くを通る人がいたら気付かれるだろう?」
そんな事言われても、姿勢が変わったせいで違う場所に当たるようになった先端が僕をはしたなくさせてゆく。
「ふぁっ……ン、ん、そこ……!」
下のフロアのランチを告げる音楽がかすかに聞こえる。
ああ、11時30分だ。早く終わらせないと今週もご飯を食べそこなってしまう。
「ぶ、部長。午後イチで会議……ひぃっ!あんッ、あ、あッ!……」
僕の言葉に午後の予定を思い出した部長はスパートをかけてくれた。
ああ、おじさんありがとうございます。これで今日は午後も頑張って働く事ができます。
【完】
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