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「アキラ仕事だろ、早く行け」 「お、そうだった。 セナハル、じゃまたな〜」 「はい、お疲れさまですっ」  ヒラヒラと手を振ってきたアキラさんにペコっと頭を下げて見送り、振り返ると、ベッド上の聖南から手招きされた。 「……長かったな、どこ行ってた」  ベッド脇の簡易椅子に座ろうとすると腕を強く引かれ、ベッドの空いたスペースに半ばよろける形で座らされた。  間近で見ると、仏頂面の聖南が何だか不機嫌そうだ。 「え……っと、友達と家族に連絡して、紅茶飲んでました」  さすがに盗み聞きした事は言えなくて、そこだけ端折る。  聖南は仏頂面のまま、俺の鼻先に優しく触れた。 「……そっか。 鼻ぶつけた? 大丈夫?」 「あ、はい。 もう痛くないんで大丈夫です」 「…………頭撫でられんの好きなの?」 「え?」  鼻先を触りながら、聖南はもう片方の腕で腰をキュッと抱いてきた。 「あんな顔しちゃマズイって。 ダメだ、俺以外の奴の前であの顔するな」 「あんな顔って言われても……」  密着してる事に戸惑いながら、穏やかではない聖南の声色に視線を彷徨わせる。  何か、……怒ってる……? 「あれ無自覚ならマジでやめて。 あの上目遣いは凶器だ」 「なっ、え?」 「アキラから頭撫でられてたろ。 あん時お前最高に甘えた顔してたんだよ」 「甘えてないですよ!」 「自覚がないからやべぇって言ってんの。 なんか葉璃ってつい頭撫でたくなる顔してっから、やっぱ常に変顔してろ」 「どんな顔ですか……」  一体何に怒ってるのかさっぱり分からない。  単に撫でやすい位置に俺の頭があって、しかも背が低くて子どもっぽいから撫でてくるだけだと思うのに、聖南はしつこく「な、変顔必須!」と言ってくる。  しかも甘えた顔をした覚えも毛頭なくて、そんな事を言われても困るだけだ。 「葉璃。 俺の目見ろ、葉璃」 「嫌です。 ……よく分かんないけど聖南さん怒ってる」 「もう怒ってねーから。 ほら、こっち見ろ」  整い過ぎてる聖南は真顔だと仏頂面に見えるのかもしれないけど、声のトーンがいつもと同じになったから横目で聖南の目を伺うと、すかさず顎を取られ唇を奪われた。 「……んっ……」  ───聖南のキスはいつも突然だ。  そりゃあ、キスするぞって前もって言われても逃げてしまいそうになるんだけど。 「……っ……ん、っ……」  腰を捕らえられてるからいきなりのキスでも逃げる事はできなくて、さっきとは違う、舌が入って来るキスに目の前がチカチカした。  顔の向きを変えながら唇を強く押し付けてきて、より深く聖南の舌が侵入してきた事で縮こまってた俺の舌は難なく捕まる。  相変わらず聖南はキスの最中もジッと俺を見ていて、二重の綺麗な瞳に吸い込まれそうだ。 「……っ……ふ、ぅんっ……」  互いの舌が絡まり合って、呼吸すら苦しくなってきても聖南はまだまだ解放してくれなさそうで、俺は身を任せるしかなかった。  合間に漏れるのは、それこそ俺の甘えたような吐息で、聖南に聞かれていると思うと意識を飛ばしたくなるほど恥ずかしい。  俺は夢中で聖南の舌を追い掛けてるのに、経験値の差なのか聖南は涼しい顔で俺を見詰め続けていて、抱かれたままの腰をグッと引き寄せられると、触れられてるそこが何だか無性に疼いた。

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